EV電池に必須の「リチウム」の確保は大丈夫か 脱炭素のカギ握る資源をめぐる大問題

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――本当の意味でEVによるカーボンニュートラルを実現するためには製造から使用、製品廃棄まで含めたライフサイクルを通した脱炭素が必要になります。リチウムの採掘、精製における脱炭素は可能でしょうか。

鉱石とかん水では鉱石からのプロセスにより課題がある。鉱山での採掘時や鉱石の輸送時のCO2排出をいかに減らしていくかは、リチウムに限らずほとんどの資源に共通する問題だ。採掘時は大型重機の電動化やその電力の脱炭素を進めていくことになる。鉱石の輸送時の脱炭素も必要だし、輸送を減らすために鉱山近くで精製まで行うことも増えていくだろう。

鉱石から炭酸リチウムを精製するには、「か焼(焙焼)」といって1000度を超える高温で焼くプロセスがある。この熱源は現状では石炭や重油が中心と考えられる。これをどうやって低炭素化、脱炭素化していくか。カーボンフリー電力を使った電気炉を使う方法はあるかもしれない。

先ほど説明したように、鉱石を硫酸に溶かす工程があるため精製では硫酸ナトリウムが大量に発生する。この硫酸ナトリウムはあまり用途がなく、環境にも負荷がかかる。CO2だけを考えていればいいわけではない。

アタカマ塩湖はフラミンゴの生息地

――かん水からの生産は環境負荷が小さく望ましいのでしょうか。

塩湖の地下からかん水をくみ上げて、天日で水分を蒸発させてリチウムの濃度を上げるため、か焼に比べるとエネルギー消費は少ない。かん水からの生産はチリやアルゼンチンに多く、精製もこれらの国内で行われており、輸送負荷も軽い。ただし、天日による蒸留には時間がかかるという欠点がある。生産量を短期間で増やすことも難しい。

また、リチウム資源が豊富な南米のアタカマ塩湖はフラミンゴの生息地なので、そうした生態系への配慮が求められるようになってきた。蒸発池の新設に対してチリ政府は否定的な態度をとっている。精製過程でナトリウムやカルシウムなどの山ができるといった問題もある。チリ政府は天日蒸発ではなく、吸着剤や膜を使ってリチウムを濃縮する直接抽出法の技術革新を促進しており、新たなベンチャーも生まれている。

――とはいえ、日本企業がリチウム権益を押さえる場合、CO2排出削減で有利なかん水の資源を重視すべきでしょうか。

カーボンニュートラルのコストまで考えるとかん水が有利であることは確かだ。日本企業では、豊田通商がアルゼンチンの塩湖でかん水から生産するプロジェクトに参加している。一方、鉱石は生産時間が短くて済むといった長所もある。

――リチウムの採掘から精製までのカーボンニュートラルとなると、コストアップは避けられません。

それはその通りだが、CO2を含めた温室効果ガスの削減は社会的に求められている。リチウムについても、ユーザー側からCO2排出量が少ない原料を使いたいというニーズも出始めている。資源側も対応を進めていくことになるだろう。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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