静岡からわずか2km、JR「山梨リニア工事」ルポ

同じ南アルプスでも湧水少なく、掘削は順調

斜坑を掘り進める掘削マシン「ドリルジャンボ」。コンピューター制御で発破用の爆薬を埋める穴を開ける(撮影:尾形文繁)
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JR甲府駅からバスで1時間半揺られ、山奥を分け入ってたどり着いた先は南アルプスのど真ん中。山腹に巨大な穴がポッカリと口を開けていた。リニア中央新幹線の本線トンネルにつながる広河原非常口(山梨県早川町)の坑口である。5月12日、JR東海が工事現場を報道公開した。

注目すべきは、この工事現場の位置である。坑口の奥にある切羽と呼ばれる掘削面から静岡県境までわずか2kmしか離れていない。隣の静岡工区ではトンネル工事で発生する湧水や南アルプスの生物多様性への影響を県が懸念し、工事着工を認めていない。もちろん、2km離れるだけで地質や生物多様性は大きく変わる可能性があり、広河原の工事現場の状況を静岡工区にそのまま当てはめることはできない。それでも、机上の議論と比べれば、現場を見ることの意義は大きい。

リニアの品川―名古屋間の路線距離は約285km。うち、山梨、静岡、長野にまたがる区間に全長25kmの南アルプストンネルが建設される。山梨、静岡、長野、各工区に分けて建設が行われる。山梨工区の全長は7.7kmで静岡県側にも一部食い込む。東京側から静岡側に向かって約40パーミル(1kmごとに高さが40m変動する)の上り勾配。新幹線の最高勾配よりもきつい勾配を設定できるのは磁力で浮上して走行するリニアならではだ。

将来の非常口「斜坑」の奥へ

坑口から南アルプストンネル本線の間に、斜坑と呼ばれる長さ4.1kmのトンネルが掘られている。この斜坑は2017年5月に掘削がスタート。掘削が終わると引き続き先進坑と本線の建設が始まる。先進坑は事前に地質や湧水の状況を把握するために本線に並行して掘削され、いわば水先案内人のような役割を果たす。

斜坑は先進坑や本線に機材を運び込んだり、工事で発生する土砂を運び出したりするために使われる。リニア開業後、斜坑は非常口として活用される。

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この非常口の坑口から東京方に2.4km離れた早川非常口では、斜坑の掘削工事が2017年6月に完了し、一足先に本線の工事が始まっている。早川斜坑は日本を東西に分ける糸魚川静岡構造線を貫いている。「断層を通過したら地質が明らかに変わった」と、JR東海の担当者が話す。ただ、断層線を通過する際、工事に特段の支障はなかったという。

小型のバンに乗って、JR東海の案内で斜坑の奥へ進んだ。穴の大きさは幅11m、高さ8m。本線のトンネルは幅13m、高さ8mなのでやや小さいといったところだ。道路の脇には資材や機材が積まれており、バンは時速20km程度でゆっくりと進む。頭上には標高2000m級の山々が連なっている。

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