静岡からわずか2km、JR「山梨リニア工事」ルポ 同じ南アルプスでも湧水少なく、掘削は順調

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トンネル入口から3.3km先が現時点の工事の最前線。そこに、ドリルジャンボという巨大な掘削マシンが後ろ姿を向けていた。山岳トンネルの掘削ではおなじみの重機だ。

ドリルジャンボには3本のアームがあり、それぞれにドリルが付いている。トンネルの断面積は約70平方メートル。ドリルが直径4.5cmの穴を約100カ所開け、そこに爆薬を埋める。以前は、作業員が長年の経験を元に穴を開ける場所を決め、ドリルを手にして穴を掘っていたが、現在これらの作業はコンピューター制御により機械がわずか40分で行う。要する人手は運転台で作業を監視する1人のオペレーターのみ。広河原斜坑の工事全体でも従事している人は40人程度だという。

地盤が硬く湧水は少ない

外壁に水滴がうっすらと浮かんでいる。天井からも時折、水滴がぽたりと落ちる。「これが斜坑の掘削で発生する湧水です」と、JR東海中央新幹線山梨工事事務所の佐藤岳史担当課長が話す。地面に落ちた水滴は坑口に向かって下降する。坑口に集められた湧水量は毎分400リットル(0.4トン)程度で、「湧水と呼べるほどの量でもない」(佐藤担当課長)。

湧水の量は早川斜坑などを含めた山梨工区全体でも毎分4.7トン程度で、「事前に想定した湧水量よりも少ない」。ちなみに静岡工区では、トンネル掘削により大井川の流量が最大で毎秒2トン(毎分120トン)減ると懸念されている。

「岩が硬く、締まっているので安全かつ経済的に掘削できている」と佐藤課長。地盤が軟弱だと掘削中に湧水が発生する可能性がある。しかし、ここの地盤は墨をする硯に使われるほど硬く、亀裂や空間もないので湧水はほとんど発生しない。そのため、安全な掘削が可能になる。

この斜坑掘削に伴い発生する付近を流れる内河内川の真下でも掘削が行われ、このときは湧水が出るかと作業員たちは身構えたが、幸いにも湧水は発生しなかったという。

地盤が弱いと1回の発破で掘り進める距離は1m程度だが、地盤が硬いため1.2m程度掘り進むことができる。これが「経済的」のゆえんだ。

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