現地ルポ、英「日立製車両」亀裂トラブルの真相 一斉に運休、原因究明や運行再開の見通しは?

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日立の広報担当者は「リフティングポイントは運行時には使用されない」としながらも、「クラックの大きさ、被害を受けている両数は、現時点で公開できない」と回答した。一方、亀裂が発生した原因については、「素材、設計上の問題なのか、点検の方法や手順に問題はないか、あらゆる方面で調査を進めているところ」という。

車両トラブルにより多数の列車が運休していることを告知するロンドン・パディントン駅の案内板(筆者撮影)

英国メディアの指摘の中には、当該車両の車体がアルミ製のため「修理が難しいのでは」というコメントもある。この点について筆者が日立に質問したところ、「修理復旧の方法など、具体的にどのように解決するかについて現時点では詳しく言えない」といい、亀裂の発生メカニズムとともに、修復に向けてもさらなる調査、検討が必要な状況であるとみられる。

一方、日本では2017年のクラス800導入に前後して、神戸製鋼によるアルミニウムのデータ改ざん問題が発覚したが、「日立が使用している神戸製鋼製アルミニウムは安全基準をすべて満たしており、現時点で今回の問題との関連性は認められていない」(広報担当者)という。

日立は5月10日の時点で、「現在、安全が確認された一部の列車は運行を再開。残りの車両についても可能な限り迅速かつ安全に問題の調査を進め、早期の運行再開をめざす」としている。同日時点では、GWRはクラス800を使用する全列車の運行を停止していたが、LNERは問題がないと認定された編成を使い、とくに減速運転などはせず通常通りのダイヤでロンドン発エディンバラ経由スコットランド方面行きの長距離列車を運行した。

ほかの車種にも同様の亀裂

クラス800に亀裂が発見されたのは今回が初めてではない。今年4月下旬には、GWRが運行する車両のうち2両のサスペンション部分に最大で深さ15mmの亀裂が見つかり、同鉄道は6編成を運用から外して点検を行った。日立は、今回発見された亀裂は別の問題だと認識した上で、「4月の問題については、運行サービスに大きく影響を及ぼす事象とは捉えていない」(広報担当者)と説明する。

一方、その後の調査でクラス800シリーズだけでなく、スコットランドを走る日立製の近郊用車両からも亀裂が見つかった。

エディンバラーグラスゴー間などに投入されている「クラス385」=2018年7月(筆者撮影)

日立は英国工場でクラス800のほか、スコットランドのスコットレール向けに近郊電車「クラス385」を生産。2018年7月に運用を開始し、現在は70編成(234両)が走っている。クラス800での亀裂発生を受け、日立は念のためクラス385についても検査を行った。その結果、クラス800と同じ「リフティングポイント」に亀裂のある車両を発見したという。

【2021年5月13日19時50分追記】初出時の記事で写真が本来の車両と異なっていたため、上記の通り修正いたします。

スコットレールの技術担当者は地元ラジオ局のインタビューで「(リフティングポイントの亀裂は)編成や各車両の構造には影響を与えない」と指摘。「亀裂が発生した理由と、これらの車両を修理ののちに運用に戻すための計画を策定するため、さらに検査と分析を行っている」と説明している。

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