日本のワクチン政策に求む安全保障という視点 民主主義が専制主義に対抗する鍵はスピードだ

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実際、中国が台湾と国交を持つパラグアイに対し、ワクチン供給と引き換えに台湾との断交を迫ったときも、アメリカがインドに働きかけ、インド製のワクチンをパラグアイに供給することで中国の圧力を中和し、パラグアイも台湾との国交を維持することが可能となった。

しかし、2021年4月に入ってインドの感染状況が急速に悪化し、ワクチンへの需要が急激に高まったことで、インドもワクチンの輸出を規制するようになった。しかし、アメリカとイギリスにおけるワクチン接種がおおむね完了するため、これらの国々で輸出に向けた余力が生まれることになる。

ワクチン外交の地経学

ワクチンを生産する国は地経学的な優位性を持ち、その優位性を政治的なパワーに転換し、他国に圧力をかけ、自らの政策や要求を押し付けることができる。しかし、ワクチンを受け入れる側とすれば、どのワクチンであれ、提供してもらうものは何でも欲しいという状況にあり、供給する国が1つであれば、その供給国が圧倒的な影響力を得ることになる。そのため、パラグアイの例が示すように、敵対する国が独占的にワクチンを供給しようとしていれば、そこに割って入り、独占させないことがワクチン外交への対抗手段となる。

専制主義国家は国内での接種を後回しにしてでも、ワクチン外交を展開できるのに対し、民主主義国家は自国での接種を優先せざるをえない。この状態で民主主義体制におけるワクチン外交のカギとなるのはスピードである。より早くワクチンを開発し、より早く国内での接種を終えることでワクチン外交を展開する余力が生まれ、地経学的な優位性を維持することができる。そのためには、平時からのワクチン開発の技術基盤を整備し、人材を育成し、生産体制を整えることが重要である。

新型コロナは先進国でも甚大な被害が発生したことで、感染症が単なる公衆衛生の問題ではなく、安全保障の問題と同様に、人々の生命と財産を国家が守らねばならない危機として位置づけられた。

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