「21秒で100回」非利き手の小指で机を叩けるか ドラゴン桜流「努力できる脳」か否かの見分け方

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『皇帝の新しい心』
ロジャー・ペンローズ 林一(訳) みすず書房
意識はあまりにも重要な現象であるので、それが複雑な計算によって「偶然」でっち上げられたものであるとは、私には思えない。

英国を代表する数学者・理論物理学者が一般向けに書いた科学読みものだが、刊行された1989年当時の最新の思想書としても読まれ、多くの議論・論争を巻き起こすこととなった。

副題に「コンピュータ・心・物理法則」とある通り、コンピュータが心を持ちうるかという問題をとっかかりに、数学、古典物理学、量子論、宇宙論、脳科学へと著者は分け入っていき、人の「心」の正体をあぶり出そうとする。

難解な数式が並ぶページが多いものの、そこは横目に見ながら読み進めていけばいい。すると膨大な思考と検証、証明の果てに、ペンローズが築いた壮大な構想が浮かび上がってくる。

彼によれば人の意識のありようを理解することは、ビッグバンから始まりビッグクランチ(大壊滅)へと至る宇宙の全歴史を理解することにさえつながるという。

つまり、この世界のすべてを知るカギは、人の意識にこそありということ。

意識の重要性を強調するペンローズは、人間の思考はコンピュータのそれとは違うと主張する。どれほどテクノロジーが発達して機械が複雑な計算をこなすようになっても、それが人に追いつき取って代わるとは思えないという。

そうしてペンローズは言う。人が知りたいと思うことはいつだって、子ども時代に発した素朴な疑問、「死んだあとの自分の意識の流れはどうなるの?」「生まれる前には自分の意識はどこにあったのか」などに戻っていく。それらに答えるには、意識の理論が必要なのだと。

『皇帝の新しい心』まとめ

考えられないほど幅広い知見を縦横に駆使しながらも、人間味あふれる思考の型を保ち続ける。著者のような存在こそ「真の知識人」と言えよう。
脳や意識のしくみをきちんと知ることは、集中力をはじめ自身の能力アップへとつながる。

次ページ3冊目は壮大なテーマを物理と化学で説明する本
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