資生堂、「ドルガバ終了」から始まる欧米撤退戦 赤字続く欧米事業、ブランド整理加速の序章か

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資生堂は戦略の転換を余儀なくされている。「(ブランド)ポートフォリオを変更し、『SHISEIDO』や『クレ・ド・ポー ボーテ』など日本発の収益性の高いスキンケアブランドを徹底的に強化していく」と、魚谷社長は2月の決算説明会で表明した。欧米事業ではドルチェ&ガッバーナ以外にもブランドの撤退や売却を進めることが予想される。

次の売却ブランドはどこになるのか。それを探る手がかりとなるのが、「(欧米では)メーキャップとフレグランス事業は抜本的に収益構造の改革をしていく」という魚谷社長の発言だ。

2月の決算説明会で魚谷社長は「日本発のスキンケアブランドを徹底強化する」と表明した。写真は2019年11月のインタビュー時(撮影:尾形文繁)

資生堂はドルチェ&ガッバーナ以外にも、2020年1月にアメリカのファッションブランド・トリーバーチとライセンス契約を結び、香水などの製造・販売を行っている。ただ香水の原料となる香料やアルコールは、化粧品としては原価が高い。容器などの包装にもコストがかかり利益率は低い。

「利益率を高めるのであれば採算性の低い香水から撤退し、儲かるスキンケアの売上比率を高める戦略は正しい」(あるOB)。このような見方に立てば、トリーバーチからの撤退も十分に考えられる。

最大の焦点はベアエッセンシャル

とはいえ、売却対象の最有力候補はなんといってもアメリカのベアエッセンシャルだ。

2010年に1800億円で買収したものの、その直後から業績が悪化。2013年3月期と2017年12月期に、計900億円を超える減損を計上した。現在も店舗の縮小などを続けている「お荷物ブランド」だ。一刻も早く手放したいのはやまやまだろうが、問題は売却先が見つかるかどうかだ。

香水やメイク化粧品からの撤退を進め、利益率が高い高価格帯スキンケア領域の比率を上げていく構えを取る資生堂。一方で、この新戦略を不安視する向きもある。「香水が中心のヨーロッパやメイクが中心のアメリカで、スキンケア商品が売れるとは考えづらい」。前出とは別のOBはその実現性に疑問を投げかける。

資生堂は2020年に7年ぶりの最終赤字に転落し、大手化粧品メーカーでは"独り負け"となった。「プロ経営者」として2014年に就任した魚谷社長は、同社の業績を復活させ長期的な成長に向けた道筋を示すことができるのか。その手腕が問われる正念場を迎えている。

星出 遼平 東洋経済 記者

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ほしで・りょうへい / Ryohei Hoshide

ホテル・航空・旅行代理店など観光業界の記者。日用品・化粧品・ドラッグストア・薬局の取材を経て、現担当に。最近の趣味はマラソンと都内ホテルのレストランを巡ること。

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