資生堂、「ドルガバ終了」から始まる欧米撤退戦 赤字続く欧米事業、ブランド整理加速の序章か

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ドルチェ&ガッバーナは中国で苦戦を強いられていた。きっかけは2018年に起きた広告をめぐる騒動。本国のドルチェ&ガッバーナ社が、箸を使ってピザやスパゲッティを不器用に食べる中国人女性の動画を公開したところ、侮蔑した内容であり人種差別的だとして、中国で批判の的となった。

批判の矛先はドルチェ&ガッバーナ社に向けられたとはいえ、資生堂も影響を免れなかった。中国の大手ECサイトでは、今もドルチェ&ガッバーナの商品が販売されていないからだ。アリババの「天猫(Tモール)」や京東集団の「JD.com」では、同ブランドを検索しても「関連する商品は見つかりません」と表示される。事実上、中国市場から締め出されているのだ。

また、ドルチェ&ガッバーナが得意とする香水やメイク化粧品は外出時に使用することが多く、コロナ禍で売り上げの落ち込みが激しかった。資生堂における、同ブランドの2020年12月期の売り上げは前期比28%減。これは日本国内の化粧品市場の20%減やアメリカの同市場の8%減(2020年、イギリスの市場調査会社ユーロモニター調べ)を大きく上回る。

欧米での拡大策は惨憺たる結果に

資生堂は2010年のベアエッセンシャル社買収を皮切りに、欧米で積極的な拡大策を続けてきた。メイク化粧品のローラ メルシエや自然派スキンケアのドランクエレファントを立て続けに買収した。

しかし、結果は惨憺たるものだ。2016年以降、アメリカ事業とヨーロッパ事業で計上した営業赤字は累計1000億円を超える。加えて、今まで稼ぎ頭だった日本と中国事業がコロナ禍の影響で低迷し、欧米事業の赤字をカバーできなくなってしまった。今年2月に開催された決算説明会で、魚谷雅彦社長は「欧米の収益性の改善は最大の課題」と危機感をあらわにした。

「欧米事業はブランドの価値を上げるために採算度外視で進出しており、もともと赤字体質だった。さらにM&Aを中心とした拡大戦略によって、のれん償却などのコストがかさみ、赤字幅が拡大していた」。資生堂の元役員の1人はそう指摘する。

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