SNSで業界が一変、米新興メディアの拡散力 新興勢の台頭で斜陽業界に再び注目が集まっている

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新興メディアは人員が少なく、記事の流通コストもかからないため、「ムダのないコスト構造になっている」(米国のメディア業界に詳しい東京工芸大学専任講師の茂木崇氏)。ある程度の訪問者数を維持し広告を集められれば、既存メディアより利益を出しやすい構造になっている。

事業の継続性には課題も

が、持続可能な事業を確立するには、課題も残る。

一つは「バズフィードのようなサイトは誰でもまねしやすく陳腐化しやすい」(同)点だ。SNS経由の訪問者が多いというのは、裏返せばそのサイトを直接訪れる特定ファンが少ないともいえる。加えて、新興メディアは軽い記事が多いと見られがちで、広告主によってはブランド毀損をおそれ、避ける傾向がある。

こうした中、各社が力を入れ始めているのが、むしろ硬派な記事の拡充だ。

バズフィードは12年に著名政治記者を他社から引き抜き、編集長に抜擢。その後も、ピュリッツァー賞受賞経験のある記者などを集め、調査報道に力を入れている。「ウォーターゲート事件が今あれば、ツイッターでものすごく拡散されていたはず。調査報道はSNSと相性がいい」とラム副社長は見る。

さらに目下各社が力を入れているのが、「動画」「モバイル」「海外」の三つだ。

たとえば、ハフィントンポストは、自社内にスタジオを新設。昨夏から独自番組のライブ配信のほか、オンデマンド配信を行う。バズフィードもロサンゼルスに、動画配信部隊を設置したばかりだ。

一方、海外ではビジネスインサイダーが豪州やインド、マレーシアなど5カ国で展開しているほか、バズフィードもフランスやインド以外に日本への進出を計画している。

現在は読者とメディアとの接点が激変している真っ最中。ブランド力確立など新興メディアの課題は多いが、当面は台風の目となるのは間違いない。

「週刊東洋経済」2014年7月19日号<7月14日発売>掲載の「核心リポート04」を転載)

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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