「就職氷河期再来」語る人が的外れでしかない訳 コロナ禍でも企業の新卒採用意欲は底堅い
新型コロナウイルスの感染拡大が「就職氷河期の再来を招いている」という声がある。JTBグループや日本航空(JAL)、ANAホールディングス、JR東日本といった就職人気企業が採用中止または採用数を大幅に減らすという方針を打ち出している。
しかし、実際は企業の採用意欲は底堅く、採用を大幅に減らす状況にはなっていない。
2022年3月卒の求人倍率は1.5倍
リクルートワークス研究所は4月27日、2022年3月卒業予定の大学生・大学院生の求人倍率(学生1人に対する求人数)を発表した。新型コロナ感染拡大が続く中、前年比0.03ポイント減の1.5倍となった。全国の学生の民間企業就職希望者数45.0万人に対して、求人総数は67.6万人と、求人総数が就職希望者を22.6万人上回る。
この結果についてリクルートワークス研究所の茂木洋之研究員は「求人倍率は微減だが、1.5倍台を維持して底堅い」と評価する。
従業員規模別に見ると1000人未満の企業は前年に続いて求人数を減らしているが、1000人以上の企業は増加に転じた。業種別では建設業、製造業、流通業の求人倍率が上昇した。コロナ禍でもこうした業界の人手不足状況は変わらず、企業の採用意欲は強い。
この大学生・大学院生の求人倍率の過去を振り返ってみよう。就職氷河期に最悪だった2000年卒で初めて、そして唯一、1.0倍を切っている。その後、2000年代半ばには回復し、2年連続で2.0倍を超える年が続き、リーマンショック後にまた低迷。2011年~2014年卒は1.2倍台で推移し、2015年ごろから売り手市場となっていた。
売り手市場といえるか否かの基準は1.6倍が目安だとされている。2022年卒の1.5倍はそれを若干下回るが就職氷河期やリーマンショック後の低迷期ほどではない。
今後の展開について茂木研究員は「求人倍率がこれ以上下がることは考えにくい。企業は中長期視点で新卒を採用している。コロナワクチンの普及で徐々に倍率が回復していくだろう」とコメントする。
人材サービスのディスコが2月に主要企業を対象に行った「2022年卒・新卒採用に関する企業調査」によれば、前年よりも採用数を「増加」すると回答した企業は全体の15.6%。これに対し「減少」は 12.9%で、「増加」が「減少」をやや上回る。また、「増減なし」が 60.1%で、あわせて約76%が2021年春以上の採用数を予定していることがわかる。
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