教職免許、運営交付金の仕組みが大問題
――最近、政府もグローバル教育関連の政策を打ち出しています。
イノベーションに詳しい経営者の齋藤ウィリアムさんの言葉を借りれば、「政府主導でイノベーションが起こる確率は、男性が子どもを産む確率より低い」ということです。グローバル教育についても、同じことが言えて、官が焼け太りするメカニズムになってはいけない。公設民営の学校を作ったり、メーカーの技術者が学校で新しい技術を教えたり、商社マンがグローバル人材の育成について話すなど、民間の力を利用してできることがたくさんあると思います。
ここで壁になるのは、教職免許です。慶応SFCにはインターネットの第一人者、村井純教授がいます。彼の学生がITを教えると、子どもの上達がとても速い。でも、教職免許がないから学校のカリキュラムに入れるのが難しい、という実情もあります。教職免許は1回取ればずっと仕事ができますが、更新制にすべきだと思います。
――本気でグローバル教育をやるなら、根っこにある規制や既得権益に切り込まなくてはいけない、ということですね。高等教育については、いかがでしょう。
文部科学省が大学に出している運営交付金などのあり方を根本的に変えるべきです。現在、国公立大学と私立大学では補助金の額が大きく違います。私は、これをすべて「競争的研究資金」に変更すべきだと主張してきました。教育の質を競い合い、いい大学が国公立・私立を問わずたくさんの補助金を得られるようにすればいい。
要するに国公立大学を民営化しろ、という主張です。郵政民営化のときは賛成してくれた東大教授の友人が、この主張には、やはり賛成してくれませんでした……(笑)。
――研究用の資金、「科学研究費」については、すでに、競争的な配分が行われています。教育資金についても、同様にすべき、という意味合いでしょうか。
そのとおりです。国公立大学と私立大学の格差はほかにもたくさんあり、たとえば寄付金の扱いも大きく違います。成熟した市民社会は寄付が不可欠。私立大学に対する寄付も自由化してほしいと思います。
日本は「グローバル化」を勘違いした
ひとつ興味深い数字をご紹介しましょう。日本の文化予算は年間1000億円です。これは文化庁の予算ですが、国民1人当たりに直すとフランスの10分の1しかない。一方、アメリカは、文化に充てられる国家予算は少ないですが、文化は寄付により支えられています。文化とか教育のように公共性の高いものは、国がおカネを出すか寄付で支えるか。これが世界の二大潮流なのです。
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