本当に日本より充実?欧州鉄道のバリアフリー 古い駅は対応できず、代わりにバス整備の例も
そこでロンドンでは、地上を走る路線バスをすべてスロープ付き低床車両に切り替え、地下鉄乗車が困難な場合、中心部へはバスを使うよう呼びかけている。
中心部は渋滞が多く、少々時間がかかるのが難点だが、本数は非常に多く利便性は悪くない。苦肉の策ではあるが、代替交通としてバスという選択肢が提供されており、無策というわけではない。
このように、決してヨーロッパの鉄道はバリアフリー化が完璧とはいいがたい。一方で、実際にヨーロッパに住んで筆者が感じることは、設備が不十分でも困っていれば周囲の人が快く手を差し伸べてくれるということだ。筆者は車いすユーザーではないが、ベビーカーを押して地下鉄に乗っていると、階段付近では誰かしらが声をかけてきた。困っている人がいれば自然と声をかけるような世の中になっていると感じた。
鉄道が困難なら他交通機関と連携を
理想は、車いす利用でも誰のサポートも要らず、誰に連絡することもなく、事前の調べなしでも自由に移動できる世の中である。その点に筆者も異論はない。だが、実際にはすぐに対応するのは難しい。1日の利用者が1000人以下の小さな駅もすべてバリアフリー化を実施するのか、その場合財源をどうするのか、そして対応が難しい駅は廃止するのか、など課題は山積みだ。
バリアフリーに対応していない田舎の駅が廃止されることは欧州で現実に起こっている。もともと利用者数が少なかったこともあるが、特急停車駅以外はすべて廃止して特急以外のローカル列車が走っていない路線もあり、そこではローカル列車の代わりにバスが運行されている。鉄道での対応が困難なところはバッサリとカットして、代替手段を用意することも、今後の選択肢の1つとなるだろう。
今回のケースにおいて、JRはバスかタクシーの利用を求めたという。だが、地域の路線バスが車いす対応の低床車を運行しているかどうかが問題だ。
熱海・来宮周辺を運行する伊豆箱根バスへ電話取材したところ、同社の保有する路線バス全体の約6割が車いす対応の低床車となっているという。
ただ、海外の場合は鉄道やバスなど地域内の公共交通を同一の事業者や共同体が運行しているケースが多く、そのためにトータルな案内や乗り継ぎができるという面がある。日本は各交通機関が独立した企業で、他業種についてはほぼ関知しない。
まずは、地域ごとに地元の交通企業と連携して適宜誘導することができれば、バリアフリーの面でも利用しやすい公共交通機関に近づくと言えるのではないだろうか。
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