雨宮塔子「子どもにごめんねと言いがちな親へ」 3年間の単身帰国、私は葛藤とこう向き合った
育児も仕事もひとりで気張りがちな日本人女性
入園式を迎える4月、日本では子育て中の働く女性たちが“罪悪感”にとらわれてしまうと聞きました。育児休暇を終え職場に復帰するため、保育者の方に委ねられることになる幼いわが子にも、今後迷惑をかけてしまうかもしれない家族や職場の同僚にも、つまりは四方八方「申し訳ない」という気持ちを抱いてしまうのだそうです。
こうした思いにとらわれるのは私たち日本人だけかと思われるかもしれません。実際、仕事を持つ女性が大半のパリでは子どもを長い時間預けて働く社会の基盤がしっかりできていますし、パートナーと家事や育児を分担するのは当たり前。育児も仕事も自分ひとりでこなさなくてはと気張ってしまう日本人女性とは、環境も意識もだいぶ異なっています。
それでも、まだオムツも取れていない生後数カ月の乳児を保育園に預けるのはあまりにつらい、まだそばにいてあげたい、と思うのはやはり共通した母心のようで、実際にフランス人ママたちの苦しい胸の内を聞いたことも少なくありません。
ですが、そうした思いもほんのいっときのようです。キャリアをそう長く中断させなかったことで、産休前のポストに戻れてよかったという声や、子どもと離れて一社会人としての空気を吸ったことで、子どもとの時間をより愛おしく思えるようになった、といった声が圧倒的でした。
私は長女が幼稚園に入園する数カ月前から、自宅近くの託児所に週に1回、預けていました。パリではこの幼稚園に上がる前の託児所が公、私立それぞれに充実しているのですが、とくに仕事に就いていない女性でも、自分の時間を作るためにこうした施設を利用することに引け目を感じなくていい社会の風潮があるのです。
私の場合、自分の時間をつくるためというより(もちろんそれでずいぶんリフレッシュできましたが)、慣らし保育が目的でした。夫婦ともに日本人で、家の中でフランス語を話す機会がほとんどないので、このままでは幼稚園に上がったとき、先生やお友達とまったくコミュニケーションが取れなくて苦労するのは娘自身なのだと、しごく当然の指摘を受けてのことです。
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