出光、あえて「低スペックのEV」で見据える勝算 自動車メーカーの主戦場を攻めるつもりはない

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海外には価格破壊による成功事例が見られる。中国・上汽通用五菱汽車の小型EV「宏光MINI」だ。航続距離は最安モデルで120km、車両価格は2.88万元(約48万円)と破格の安さが受け、所得が低い農村部を中心に人気を呼んでいる。調査会社マークラインズによると、直近の中国内の出荷台数は(2021年1~3月)は9万6000台と、アメリカのテスラ(5万2000台)を大きく上回る。

出光は年間の販売目標台数を示していない。2021年10月にも正式な価格や性能の詳細を公表する予定で、ここが大きな注目点だ。

もう1つのハードルは、SSに自動車を販売するノウハウがないこと。実際にEVを売るかどうかは、出光系列のそれぞれの特約店などが判断する。出光ブランドでEVの販売や整備・点検などのメンテナンスを一手に引き受けるのは今回が初めてとなる。

既存の自動車メーカーも続々投入

新車ディーラーと異なり、SSはアルバイトを雇う場合が多い。商品知識やきめ細かな対応が求められる新車販売やアフターサービス事業で、自動車ディーラーと同じようなサービスを提供できるかは大きな課題となる。出光側もこうした点を認識しており、「(SSのコンサルティングを手がける)子会社による研修などを通じサービス品質の底上げをしたい」という。

日本国内では、トヨタ自動車が2020年12月、2人乗り超小型EV「シーポッド」を法人向けに発売した(一般販売は2022年めど)。これも法令改正で設けられた新規格の超小型モビリティだ。販売価格が約170万円、航続距離は150キロメートルと、出光が投入するEVと同等のスペックになる。

また、日産自動車と三菱自動車は2022年ごろの投入を目指して軽自動車EVを開発しており、今後、小型EV市場の競争はさらに激化するだろう。タジマモーターの田嶋伸博社長は「中国では1台50万円のEVが売られている。われわれも経験とノウハウを駆使し、将来的にはその方向へ挑戦したい」と意気込む。

出光の“初代EV”は価格やサービスで既存の自動車メーカーとの「違い」をどれだけユーザーに訴求できるか。異業種からのビジネス展開の真価が早々に問われそうだ。

横山 隼也 東洋経済 記者

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よこやま じゅんや / Junya Yokoyama

報道部で、トヨタ自動車やホンダなど自動車業界を担当。地方紙などを経て、2020年9月に東洋経済新報社入社。好きなものは、サッカー、サウナ、ビール(大手もクラフトも)。1991年生まれ。

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