出光、あえて「低スペックのEV」で見据える勝算

自動車メーカーの主戦場を攻めるつもりはない

出光興産とタジマモーターが開発中の超小型EV。バッテリーは10kwhと一般的なEVより低容量になる予定。4人乗りでも全長2.5メートル、幅1.3メートルと小ぶりだ(写真:出光興産)

新たな「自動車メーカー」として風穴を開けられるのか。石油元売り大手の出光興産は2月、電気自動車(EV)事業に参入すると発表した。

EVは2022年中の発売を目指しており、出光系列の全国のガソリンスタンド(SS)が販売を担う。開発はレース車両の開発などを手がけるタジマモーターコーポレーション(東京・中野区)が担当し、出光は自社で開発する高機能プラスチックなどの素材を車両向けに提供する。

投入するEVは2020年の法令改正で設けられた新規格「超小型モビリティ」に準拠した4人乗りと商用の1人乗りを予定。車両のサイズは軽自動車よりも一回り小さく、高速道路の走行は認められておらず、最高速度は時速60キロメートルだ。 

出光とタジマモーターは2019年から、岐阜県飛騨市や千葉県館山市などの山間部で、カーシェアリングサービスの小型EV実証実験を行ってきた。一般利用では買い物や子供の送迎といった短距離移動の需要があり、営業などに使う商用でも1日の移動距離が15キロメートル未満だったことから、「(小型EVには)軽自動車ほど高い性能は必要ない」(モビリティ戦略室の朝日洋充氏)と判断したという。

主戦場で戦う気はさらさらない

地方の足とも言われる軽だが、近年は普通車並みの車内空間があるタイプが人気を博している。自動ブレーキなど先進安全装備の搭載で性能が格段に向上しており、販売価格が150万円以上のモデルも多い。オプション次第では200万円前後になる車種も珍しくない。

一方、出光の超小型EVは販売価格100万~150万円程度、航続距離は120キロメートル程度(満充電)と軽自動車よりも抑えた性能で開発中だ。家庭用コンセントで充電できるのも大きな特徴で、夜間に自宅や事務所で充電(8~10時間で満充電)しておけば日中に使える。

あえて「低スペック」の超小型EVを投入し、山間部など公共交通機関の脆弱な地域で自動車メーカーが開拓できていなかったニーズを掘り起こしたい考えだ。モビリティ戦略室の福地竹虎氏は、「軽自動車やコンパクトカーなど自動車メーカーが主戦場とする市場で戦う気はさらさらない」と言い切る。

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