出光、あえて「低スペックのEV」で見据える勝算 自動車メーカーの主戦場を攻めるつもりはない

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そもそも、なぜ異業種の出光興産がEV事業に参入するのか。背景にはSSの経営環境が厳しさを増していることがある。

資源エネルギー庁によると、ピーク時に全国で6万カ所以上あったSSは2019年度末に2万9千カ所と半減。出光系列のSSもここ25年で6割ほど減り、約6400カ所(旧昭和シェル石油含む)となった。人口減少や自動車の低燃費化も重なって、燃料油需要が漸減していることが主な要因だ。

山間部などの人口が少ない地域ではより深刻で、SSの後継者不足による撤退も増えている。給油所の「立地ゼロ」自治体も出現し、「社会的なインフラ機能の維持すら難しい状況になってきた」(朝日氏)。出光は、事業面からも、社会的な面からも、SSの成長事業や新規事業の創出が欠かせないと考えている。

このため、超小型EVは単に新車として販売するだけではなく、法人向けにシェアリングやリースでの展開も検討している。SSで自動車保険や整備といったアフターサービスも一体的に取り扱うことで、EVを基軸にしたたSSの新たな収益源に育てる計画を描く。

超えるべきハードル

ただ、超えなければいけないハードルはいくつかある。1つは狙い通りの価格と性能でEVを販売できるかだ。

EVの価格設定では、コストの3~4割を占めるとされるバッテリー価格の高さが自動車業界共通の悩みになっている。開発を担うタジマモーターは現在、国内外のバッテリーメーカーと交渉しており、「低速走行に見合ったバッテリー性能で十分なので、安価なリチウムイオンバッテリーや鉛バッテリーを選択できる」と自信を見せるが、どれだけコストを抑えて部品を調達し、原価を下げられるかがカギを握る。

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