シエラ/クロスビー/イグニス 明暗わかれた訳 ユーザーの琴線に「触れる・触れない」の境目
それにクロスビーは背が高く室内が広いため、出かけるときの荷物もたくさん積める。どこかに遊びに行こうというのであればクロスビーがおすすめとなる。一方、イグニスは、シンプルで真面目な雰囲気さえある。同じようでいて、意外にイメージが違うのだ。
販売の明暗をわけた理由は、クルマから発せられるこうした印象にあったと考えられる。基本的にクロスオーバーを含めSUVは、実用車というよりも遊びに使うクルマだ。そうした雰囲気の違いをユーザーが敏感に感じたのだろう。
そういう意味でエスクードとSX4 S-CROSSは、さらに遊び心に欠ける。
どちらもハンガリーのマジャール工場で生産されて日本に輸入されているモデルで、日本だけでなく世界各地でリアルなSUVとして販売されるグローバルモデルだ。
言い換えれば、遊び心うんぬんではなく、しっかりと走り、悪路もこなし、そして高い実用性を持つSUVとして開発されたモデルなのである。
走らせてみれば、コンパクトSUVとして高い実力を備えていることがわかるのだが、こうした外連味のないキャラクターでは、日本の購買層の琴線に触れなかったのだろう。残念なことだ。
グローバルモデルの難しさ
個人的に思うのは、こうした“残念なクルマ”がスズキには多いことである。たとえば、最近まで販売されていたコンパクトカーの「バレーノ」も日本での販売はうまくいかなかった。内容を考えれば、コスパがよく、走りもヨーロッパ風でしっかりとしていた。しかし、売れない。
10年ほど前には「スプラッシュ」というキビキビ走るコンパクトカーもあった。ヨーロッパ車ファンからは走りの高さが評価されたものの、販売は成功しなかった。商品として悪くはないのだが、日本のユーザーをターゲットにしていない分、日本人のニーズとズレてしまっていたのだろう。
スズキのSUVモデルの販売に差があるのは、日本市場のユーザーのニーズにしっかりと“対応できているか否か”と言える。なんとも自動車ビジネスの難しさを感じさせる現象だ。
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