「車を最安値で買う人」がやっている緻密な交渉

価格交渉が「上手い人」「下手な人」の決定的な差

それではダメです。いったん支払ったお金を返させるのは容易ではなく、また確実に返ってくる保証などありません。

支払い留保という交渉カードを失った後は、相手が返金を拒めば、弁護士を雇い、裁判を起こし、勝訴判決を得なければいけません。それでも返金してこなければ、今度は銀行口座のありかを突き止めて、それを差し押さえる手続きを取る必要が出てきます。しかし、ようやく見つけた銀行口座を差し押さえる手続きを行ったときには、どこかにお金を移していて、残高がほとんどなかったなんてことも大いにありえるのです。

どんなに法的に正当な権利であっても、いったん支払ったお金を返してもらうのは多大な労力を要するのです。相手の会社に乗り込み、金庫をこじ開けて、500万円を取り返すことなどできません。

逆に、支払う義務があるかもしれないお金について、その支払義務が100パーセント確実になるまでとりあえず支払わないでおいても、問題になることは少ないでしょう。

こういったとき、大抵は、相手が督促状を送ってきても、腹を据えて500万円の支払いをストップすればよいのです。そうしておけば、状況は自分に有利であり続けるのです。

その有利な状況下で、相手に工事のやり直しを求めれば、相手は無視できません。きっとやり直しに応じてくるか、あるいは「少なくとも半分の250万円を支払え。そうすれば、やり直しに応じる」などと譲歩してくるでしょう。

つい最近まで日本はムラ社会でした。ムラ社会での取引であれば、争いに発展しそうになっても、一方がぐっとこらえて誠意を示せば相手方がそれに誠意で応じるのが普通なのでしょう。しかし国際ビジネスの世界ではそううまくはいきません。外国企業との間で契約上の争いが生じているのに「まずは誠意を示そう」と支払いを実行し、しかし相手方が期待どおりに誠意で応じてくれず、「裏切られた」と私の事務所に持ち込まれるケースは枚挙にいとまがありません。

これからは日本国内のビジネス社会も国際化が進みシビアな世界になっていくでしょう。それは自分に有利な状況を作り、その状況を維持しながら、交渉を続け、取引を実行していくべき厳しい世界なのです。

主張には「客観的根拠」を付け加える

自分の主張を相手に受け入れてもらいたいとき、裏付けのない主張をただ繰り返していてもうまくいきません。そのままでは相手に主張を理解されないし、理解されなければ交渉は成立しません。

たとえば、何かの商品を売るとき、いくらで売りたいかをただ繰り返してもうまくいかないでしょう。

「この商品の価格は10万円です。どうしてもこの価格でないと売りません」と、何度、繰り返したところで、相手は納得しないのです。 

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