「車を最安値で買う人」がやっている緻密な交渉 価格交渉が「上手い人」「下手な人」の決定的な差

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私はこの金額で売れれば満足でしたが、それでもセオリーどおり、もう一押しをします。

私「もっと増額できないかな」
ディーラー「うーん、では3800ドル」
私「Done. 決まりだね」

結局、10分程度のやりとりで、2500ドルだった下取り価格を3800ドルまで、1300ドルも増額してもらうことができました。その成功の要因はブルーブックの価格をあらかじめ調べていったことにあります。ディーラーが反論できない客観的な金額を提示したことが功を奏し、ほぼ私の希望価格に近い価格で買い取ってもらうことができたのです。

交渉相手からの情報を判断材料にしない

交渉相手に客観的な中立情報を伝えると、交渉がうまく成立に向かう。これは、あなたが反対の立場にいるときも同じ理屈です。どういうことでしょうか。

相手があなたに対して、「他社がどうしているか」「他人がどうしているか」といったことを伝えたときに、それを鵜吞みにして交渉の判断材料にしてはいけないのです。信じてよいのは、客観的な、信頼のおける情報だけです。

あなたが客観情報をつかんでいなかったり、知識がないのであれば、まずそれらの情報を入手し、知識を得なくてはいけません。

当事務所に、アメリカに初めて進出した日系機械部品メーカーX社から相談があったときのことです。話を聞くと、「顧客のY社と契約を締結したのだが、あまりに不利な契約内容なので継続するのが難しくなった。これを見てほしい」とのことです。早速、契約書の中身を見ると、Y社に一方的に有利な内容となっています。

「なぜ、こんなに不利な内容の契約を取り交わしたのですか?」

「お恥ずかしい話ですが、契約書を渡されたとき、Y社の担当者に『ほかのサプライヤーは全社この契約内容で取引していますよ』『この契約書の内容は、業界スタンダードですよ』と言われたのです。それゆえ、よく中身を読まずに署名してしまいました」

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さらに話を聞くと、「取引相手と信頼関係を築くのは大事なことですよね。終始、Y社を信用しているというスタンスで契約締結の話し合いをしていました」とのこと。しかし実際にはその契約書の中身は、決して業界スタンダードに従ったものではありませんでした。Y社が一方的に自社に有利な契約書フォームを用意し、X社がアメリカのビジネスに疎いのをよいことに、その契約書にそのまま署名するよう迫ってきたというのが真相のようです。

当然ながら、契約解除についても、Y社に契約違反がない限りはできないように定められています。結局X社は、5年後の契約期間の満了時まで、薄い利益のために大きなリスクを負いながら、Y社と取引を続けざるをえませんでした。

取引相手と信頼関係を築くことは大事なことです。しかし信頼関係は取引相手の言うことを鵜吞みにすることによって築くものではありません。むしろ、取引相手の言っていることが正しいのか、自らの調査によって確認しながら契約を進めるほうが取引相手からも敬意が得られます。世はネット時代、情報はあふれています。正しい、客観的な情報を得る努力を惜しまず、時間と労力を費やして情報武装したうえで、交渉に臨むべきなのです。

大橋 弘昌 米国ニューヨーク州弁護士

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おおはし ひろまさ / Hiromasa Ohashi

日本国外国法事務弁護士。1966年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業、サザンメソジスト大学法科大学院卒業。西武百貨店商事管理部、山一證券国際企画部を経て渡米し、ニューヨーク州弁護士資格を取得。米国の大手法律事務所ヘインズ・アンド・ブーン法律事務所で5年間のプラクティス後、2002年に大橋&ホーン法律事務所を設立。現在、ニューヨーク、ダラス、東京の3都市に事務所を構え、日本企業の在米現地法人を中心に100社以上のクライアントを持つ。会社法、M&A、雇用労働法、訴訟法、税法などに精通。

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