「値段のない料理店」の店員がやたら前向きな訳 飲食店の未来は「サステナブル」が武器になる
その頃、35階のレストランの窓からは横浜港に停泊する大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の姿が確認できた。500人を超える乗船客が新型コロナウイルスに感染したとのニュースが連日報じられ、スタッフの中にも不安が広がりつつあるのを石関氏は感じていた。
そうこうしているうちに、2020年4月18日から8月31日まで、入居しているホテルが新型コロナ軽症患者受け入れ施設となり立ち入り禁止となる。ホテル内でレストランのほか、カフェとお土産ショップを運営していたが、3店舗すべて休業となった。
「これは『サステナビリティ』の考えを社員に理解してもらう絶好のチャンスだ!」
こうして休業中の4カ月間、多くの飲食店が慣れないテイクアウトに右往左往するなか、石関氏は「社員研修」にすべての時間を費やした。
スタッフ一人ひとりが経営者目線を持つ
研修の柱は「企業理念」「財務諸表」そして「サステナビリティ」の3つ。創業以来掲げている「コアバリュー」を社員にもう一度浸透させるとともに、調理スタッフも新入社員も分け隔てなく、すべての社員に事業計画を考えさせた。狙いは、社員全員に経営者目線を持ってもらうこと。ゼロから事業を構想する力、バランスシートを読む力を重点的に鍛えた。
加えて、「サステナビリティ」に関しては表面的な知識だけでなく、一人ひとりテーマを与えて調べさせ、全員の前で発表する課題を課した。
「ある社員に『食料廃棄問題』のテーマを与えたところ、彼はコンポスト(生ゴミをたい肥に変える容器)について誰よりも詳しくなりました。コンポストに生ごみを与えるのが楽しみで、ペットのようにかわいがるようになりましたよ(笑)」(石関氏)
2020年2月に横浜で「サステナブル・ブランド国際会議」が開催されるとの話を聞きつける。参加したいが、参加費は1人当たり3万円近くかかり、石関氏、表氏と現場スタッフから1人、計3人で9万円弱。過去、数百億円レベルの開発プロジェクトを動かしていた石関氏がおおいに悩んだと言う。
「当時はそのくらい、キャッシュに困る状況だったんです。でも、投資するからには絶対元を取ってやろうと、社員3人の参加を決めました」(石関氏)。表氏も、「いろいろな人を捕まえては名刺を配りまくって『何もわからないので教えてください』と食らいつきました」と振り返る。
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