「値段のない料理店」の店員がやたら前向きな訳 飲食店の未来は「サステナブル」が武器になる
2020年(1~12月)の飲食店の倒産は780件で、過去最多を更新した(帝国データバンク「飲食店の倒産動向調査(2020年)」)。長引く新型コロナウイルスの影響で、とりわけ大都市圏の飲食店は政府の休業や時短営業の要請に振り回され、新たにテイクアウトに取り組むなど模索し続けた1年だったことだろう。
そんななか横浜にあるそのレストランは、入居しているホテルが新型コロナ軽症患者受け入れ施設となり2020年4月から約4カ月半の間、休業せざるをえなくなった。テイクアウトに活路を見出す飲食店をよそ目に、石関氏は「今まで、やりたくてもなかなか時間とお金を投下できなかった社員研修を徹底的にやろう」と考えた。
コロナ前に突然の「サステナビリティ宣言」
社員研修を経て、なぜ「値札のないメニュー」に行き着いたのか。このナゾを解くために、時計の針をコロナ前の2019年に巻き戻してみたい。
横浜港とみなとみらい地区を一望できる高層ホテル開発計画を聞きつけた石関氏が、ホテル側と直談判して念願の直営レストランをオープンしたのは2019年9月。好調なインバウンド需要に支えられ、船出は順調だった。
その一方で石関氏は、数年前にニューヨークに出張した際、現地の消費トレンドの変化を感じたことをきっかけに、ずっと霧がかかったようにモヤモヤした思いを抱えていた。その霧が、2019年の大晦日に突如晴れたという。
「そうだ、これからは『サステナビリティ』だ!」
年が明け、2020年初のキックオフミーティング。石関氏は会社のスタッフを前に「これからは経営の軸を『サステナビリティ』に100パーセント振り切る」と宣言した。
「新年早々何を言ってるんだ、と……。スタッフも“キョトン”を通り越した表情をしていましたね」と、創業時からのメンバーで、サステナブルデザイン室長の表秀明氏は笑いながら当時を振り返る。
一方で石関氏の目には“未来の飲食店”の姿が見えていた。「これからは、おいしい料理を提供するだけではダメ。飲食店に限らずお客様に選んでいただくには何らかの付加価値が必要で、“サステナビリティ”は経営上の武器になると考えた」と石関氏は話す。
代表からの思わぬ「サステナビリティ」のお年玉。石関氏をのぞく全員が、しばらくの間「?」を解消できないまま、2020年2月に入った。
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