帝国ホテル「半世紀ぶり建て替え」に映る危機感

外資が次々と攻勢、大規模修繕では戦えない

こうした中、帝国ホテルにほど近い「パレスホテル東京」は2012年、総工費750億円を投じて再オープン。外資系に匹敵する客室の広さや内装に変え、2.4万円だった平均単価を6万円台まで引き上げた。ホテルオークラも2019年に総工費約1100億円で旧本館を建て替え、単価をアップさせた。

帝国ホテルは定期的に大規模修繕こそ実施してきたものの、それでは外資系にも、先手を打つ国内勢にも太刀打ちできない。将来を見据えれば、コロナ禍でも建て替え計画を先送りするわけにはいかなかった。

タワー館を先行して建て替える

まず、2024~2030年度の予定でホテル背面のタワー館「インペリアルタワー」(1983年開業)を建て替える。現在の31階建てより高くなるが、具体的な高さ、階数は未定。タワー館は賃貸収入がメインとなり、オフィスや商業施設が入居するほか、サービス付きアパートメント事業を行う。

今年3月にスタートし、「30泊36万円」の価格が話題になったアパートメント事業だが、コロナ禍が起こる前から検討を進めていたものだ。安定収益源として建て替え後も展開する。

帝国ホテルの本館にあるデラックスルームは42㎡。外資系ラグジュアリーホテルの客室は50~60㎡と広く、刷新が課題だった(記者撮影)

2031年度からは本館の建て替えに着手。課題の客室を広げ、平均単価も大幅に引き上げる考えだ。ただし、富裕層のみをターゲットとする戦略ではない。

「長年利用いただく国内の会員や顧客が第一。また国賓クラスの宿泊客を迎えることも多いが、一方で随行者の客室も一定数は必要。宿泊先として使い勝手のよいバランスを考慮して、全体を底上げする」(広報課長の照井修吾氏)。

やはり、懸念点は膨大な事業費による財務の悪化だろう。2020年末時点で同社の自己資本比率は74.9%と高く、有利子負債もゼロ。業界内では珍しく、財務体質は健全だ。「建て替えや修繕、経済危機などに備えて財務の安定化を図ってきた。最後に借り入れを行ったのは1996年の帝国ホテル大阪の開業時」(経理部長の杉山和久氏)だという。

今回はタワー館の土地の一部を三井不動産に譲渡(価格は未定)し、建設資金に充てる。そのほかは借り入れで調達し、財務の悪化を極力抑える方針だ。

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