帝国ホテル「半世紀ぶり建て替え」に映る危機感 外資が次々と攻勢、大規模修繕では戦えない

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築年数の浅いタワー館を先に手掛けるのは、本館の建て替え時に、安定した賃貸収入で経営を下支えするためだ。実際、コロナが直撃した2020年4~12月期も、不動産賃貸事業は16億円(前年同期比4.1%増)の営業黒字を確保している。

もっとも、同時期のホテル事業は営業赤字85億円と苦戦が続く。コロナの動向次第だが、多額の資金が必要となる本館工事の開始までの10年間、財務の健全性を維持できるかは重要なポイントになる。

現在は人件費抑制と人材育成のため、従業員約50人が他社に一時出向中。高い接客スキルを持つ人材の需要は根強く、中には和菓子屋に出向したパティシエの例もある。三井不動産との連携も生かし、同グループの「HOTEL THE MITSUI KYOTO」(2020年11月開業)などにも従業員が出向している。建て替え期間中も雇用維持のため、外部への出向を駆使する計画だ。

2代目の本館を一部で再現?

新たな本館はどのような姿になるのか。詳細は明らかにされていないが、可能性の1つに挙げられるのは、世界的名建築と言われた2代目本館の要素を取り込むことだ。

ライト館は現在、愛知県の明治村に移築・再現されている(画像:「帝国ホテルの120年」より)

建築家フランク・ロイド・ライトが設計し「ライト館」と呼ばれた2代目本館は、1923年9月1日の開業日に関東大震災が発生。その後の東京大空襲にも耐え抜いた伝説を持つ。

地盤沈下や老朽化で1968年に取り壊されたが、当時は建築家や文化人の間で保存運動が巻き起こった。佐藤栄作首相はアメリカでライト館について質問を受け「後世に残すよう今後も考えたい」と述べたほどだった。

ライト館の面影は、本館の「オールドインペリアルバー」やスイートルームに残されている。なお、ライト館での勤務経験を持つ従業員が今も1人在籍しているという。The Okura Tokyoが旧本館のロビーを詳細に復元したように、帝国ホテルの新たな本館もロビーや外観部分でライト館の再現がみられるかもしれない。

15年後に竣工する新本館は、そこから数十年にわたり世界の第一線で戦えるホテルでなくてはならない。むろん、強みのサービス品質を保つことも課題になる。将来の市場を見通し、外資系を含めた競合に勝てるホテル像をどう描くのか。帝国ホテルの想像力と実行力が問われることになる。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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