有効なのに「ワクチンを打ちたくない人」の心理 接種率を上げるためにはどうすればいいのか
本来、物事を決める時はトラブルの発生する確率を十分に検証したうえで、最後は数字で判断することが必要です。
ところが確率、すなわち「勘定」で決めなければならないことでも「感情」に左右されて決めてしまうという傾向は人間であれば誰でも起こりえます。とくに自分の健康が絡むとやはり冷静な判断よりも感情に委ねてしまうという傾向が強くなるのだろうと思います。
医療従事者向けに続き、4月12日からは高齢者を対象にしたワクチン接種も始まりましたが、これは強制ではありません。したがって、アンケート結果に出ているように、一定割合の人が接種を受けないということは起こりうると思います。
「ナッジ効果」での誘導も有力手段に
もちろん接種者が増えることで集団免疫が形成されるかどうかはまだ何とも言えないようではありますが、マクロの視点で考えれば、少なくとも重症化を防ぐ一定の効果はありそうです。したがって、強制できないということであれば「ナッジ効果」(ちょっとしたきっかけを与え、行動を促す方法)を使うことで、自然に接種者が増えるよう誘導していくことも検討すべきではないでしょうか。
例えば情報公開です。各自治体は保健所等を通じて地域の感染者数等について、さまざまな情報を持っているでしょうから、同一の母集団において、ワクチン接種前と接種後で、感染者数、重症者数がどの程度変化したのかといった情報を提供するのは、有効ではないでしょうか。
また、アメリカにおいては、すでに現在全国民の約3~4割が接種済みとのことですが、同国の疾病対策センター(CDC)によると、少人数の接種完了者同士で屋内なら、マスクなしで集まっても感染リスクは低いとしています。
これも科学的なエビデンスという意味では、まだ不十分でしょうし、公共の場でのソーシャルディスタンスの確保やマスク着用の必要性は変わらないと思いますが、接種者が増えることで、つねにマスク着用というストレスからはいくらか解放されるようになるかもしれません。
社会制度をデザインする時には「ナッジ効果」が有効であることは知られています。感染症対策というまさに壮大な社会的政策を構築するにあたっては、こうした「人々が行動を起こすにあたっての心理的な分析」も、重要になっていくのではないでしょうか。
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