有効なのに「ワクチンを打ちたくない人」の心理 接種率を上げるためにはどうすればいいのか
今回のワクチンの場合で考えると、前述の「感染リスク」と「副反応リスク」を考えた場合、発表された統計的には「副反応リスク」のほうが小さいように思えます。
実際に医療従事者の方々はみなさん積極的に接種を受けているようです。ところが多くの人にとって、「ワクチンを接種していない状態」が“現状”であり、「ワクチンを接種する」ことが“現状を変えること”になります。現状を変えなかった場合、つまりワクチンを接種しなければ、副反応リスクはゼロですが、感染リスクはそれまでと変わりません。
もし現状を変えたことで、厄災になったら?
一方、現状を変える、すなわちワクチン接種をすれば、感染リスクは減少しますが、副反応リスクもゼロではなくなります。
冷静に考えると、どちらがよりトータルでのリスクが少なくなるかということで判断するのが正しいと言えます。そう考えると、今まで報告されている限りにおいては、接種を受けることが合理的な判断になるはずです。ところがここからが「現状維持バイアス」の厄介なところです。
人は誰でも現状を変えなかったことで起きる厄災はある程度「仕方ない」、「運が悪かった」と諦めることができますが、変えた結果起きた厄災については強い後悔の念が生まれます。
つまり「余計なことなど、しなきゃよかった」という気持ちです。この場合で言えば、「別にワクチンを接種しなくても今までと同じように予防措置をしていれば問題ないじゃないか。むしろ余計なことをすることでアナフィラキシーショックみたいなことが起きたら大変だ」という感情のほうが、「ワクチンを接種しないと感染するかもしれない」という気持ちよりも、強くなりがちだということなのです。
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