ベンツ新型Sクラス、乗ってわかった進化の神髄 気分高まるドライバーズカーになったからこそ

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しかしながら個人的にはこの新型Sクラス、むしろドライバーズカーとしての資質の高さこそが、もっとも鮮烈だった。それこそワインディングロードを走らせていても、これほどまでに気分が昂揚するSクラスは歴代で初めて。正直、感動すら覚えるほどだったのだ。

実のところ、最近では世界的に見ても、このSクラスだったり、あるいはロールス・ロイス ゴースト、ベントレー フライングスパーといったクルマを所有するエグゼクティブなどと呼ばれるような人たちの多くは、仮に平日は運転手付きでの移動だったとしても、週末には自らステアリングを握って楽しむという例が多いのだという。その視点で見れば、Sクラスが走らせて楽しいクルマに進化するのも、まったく不思議なことではない。

新型Sクラスの主役はドライバー

そして、そこで気づいたのだ。オーセンティックなラグジュアリーからはずいぶんと飛躍したインテリアも、まさにドライバーズカーとしての必然だったのだということに。

もしもリアシートが主役のクルマだったなら、ドライバーにとっての扱いやすさを重視したタッチスクリーンやヘッドアップディスプレイ、また単なる装飾にととまらず、温度調整の際に赤く青く光ったり、車両が接近しているのに気づかずドアを開けようとした際に光と音で警告を行ったりするといった機能性も持たされたアンビエントライトなどは、ちらちらと眩しくて邪魔な存在だったに違いない。

新型Sクラスの主役はドライバー。メルセデス・ベンツが最初にわれわれにインテリアを見せたのは、そういうメッセージだったのだ。

「最善か無か」を標榜していた往年のメルセデス・ベンツは、絶対的な自信と威厳に満ち溢れたクルマを世に送り出していたが、一方でそのあり方は時に独善的という見方もされていた。1991年デビューのW140ではそれが仇となって「大きすぎる」などと批判されることとなり、続くW221では一転、スマート路線のSクラスが生み出されることになる。おそらくはその頃からだろう。そのクルマづくりは、ユーザーの嗜好をよく見極めたものになってきたように思う。

生まれ変わった新しいSクラスは、まさに今のユーザーの嗜好をよく見ていたからこそ、こうした進化を遂げたのだろう。ラグジュアリーカーを作るというのはこういうことなのだと、改めて深く感心させられた次第なのだ。

島下 泰久 モータージャーナリスト

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しました・やすひさ / Yasuhisa Shimashita

1972年生まれ。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。走行性能からブランド論まで守備範囲は広い。著書に『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)。

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