事業仕分けの仕掛け人、現場の風を官に吹かせた--加藤秀樹・行政刷新会議事務局長
4月23日から始まった事業仕分けの第2弾。支持率が急降下する鳩山内閣にあって、ほとんど唯一、国民的な喝采を博しているのがこの事業仕分けだ。
第1弾では、蓮舫参院議員ら仕分け人が鋭く官僚に迫る姿が繰り返しテレビで放映され、事業仕分けという言葉自体、流行語大賞にもノミネートされた。すっかり劇場化した事業仕分けだが、派手派手しい「仕分け人」の背後に「仕掛け人」がいる。
国レベルの事業仕分けを構想し、シナリオを書き、演出した仕掛け人の名は加藤秀樹。行政刷新会議の事務局長である。一見、クールでドライな加藤は言葉少ない。とりわけ自分自身のことはほとんど語らない。劇場型の正反対、静かな男である。
「頼むなら彼しかいなかった」
鳩山内閣の松井孝治官房副長官の意中の人物が加藤だった。
出会いは13年前にさかのぼる。当時、加藤は大蔵省(現財務省)を辞めて、民間の政策シンクタンク「構想日本」を立ち上げたばかり。千代田区平河町にあるビルの一室、構想日本の事務所で2人は初対面した。橋本内閣の行政改革会議事務局の一員として働き、官僚組織の内側からの行革に限界を感じていた松井はたちどころに「意気投合した」。
それから13年後、政界に転出した松井は「財源捻出の知恵袋に、加藤の力を借りましょう」と平野博文役員室担当(当時・現官房長官)に訴えた。財源捻出の有力な手段の一つが、事業仕分けである。政権発足後、松井自身は官房副長官として事務作業から離れ、代わりに加藤が事業仕分けの舞台づくりを主導した。
松井が振り返る。「官の世界に民の知恵を引き入れ、民の常識で税金のおかしな使われ方をあぶり出した。加藤さんの広大なネットワークがなかったら、できなかった」。