1本2億円も!過熱する「ウイスキー投資」の驚愕 拡大が続く市場、投資するファンドも登場

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国際基準に照らし合わせると、モラセスを原料とするインディアンウイスキーは、「ウイスキー」とはいいにくいものがあります。事実、EU域内では、インディアンウイスキーをウイスキーとして販売できません。

EUでは、ウイスキーは「穀物を原料とする蒸留酒を木の樽で熟成させたもの」と定義されており、モラセス原料のウイスキーはその定義からはずれているからです。これまでインディアンウイスキーが注目されてこなかったのも、国際基準からはずれる製品がほとんどだったからでしょう。

しかし近年、本格的なシングルモルトをつくる蒸留所が増え、インディアンウイスキーに注目が集まっています。

5大ウイスキーに引けを取らない

インドで初めてシングルモルトをリリースしたのは、アムルット蒸留所です。アムルット蒸留所は、インド南部のカルナータカ州の州都バンガロールにあります。

1948年の創業以来、ウイスキーのブレンドやボトリングを行っていましたが、1985年からウイスキーづくりをスタート。当初はモラセス原料の安いウイスキーをつくっていましたが、その後蒸留所を新設し、2004年に世界初のインディアンシングルモルト「アムルット」をリリースします。

サンスクリット語で「人生の霊酒」を意味する「アムルット」のおいしさは、やがて世界のウイスキー関係者に知られるようになります。『ウイスキー・バイブル』の著者であり、ウイスキーの世界的権威でもあるジム・マーレイ氏は、2010年刊行の著書で、「アムルット・フュージョン」に100点満点中97点という高得点をつけ、「世界第3位のウイスキー」と讃えたほどです。

インド南西部の街ゴアにあるポール・ジョン蒸留所も、インディアンシングルモルトをつくっています。ポール・ジョン蒸留所を運営するのは、「オリジナルチョイス」などのモラセス原料のウイスキーで知られるジョン・ディスティラリー社です。同社は、「世界に通用する本格的なシングルモルトをつくりたい」との想いから、2007年、ポール・ジョン蒸留所を新設したのです。

私はこれまで、カバラン蒸留所、アムルット蒸留所、ポール・ジョン蒸留所を訪れ、ウイスキーを何度も飲んでいますが、どれもとてもおいしいのです。とくに、熟成年数が短い製品の出来映えは、5大ウイスキー(スコッチ、アイリッシュ、アメリカン、カナディアン、ジャパニーズ)の老舗蒸留所のものに引けを取りません。

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