いきなりステーキと「俺フレ」明暗分かれた理由 継続的「差別化要因」は商売の上流で作りやすい
いい仕入れをする方法を考える際に、まず思いつくのは、「大量に仕入れることで、卸売業者の上得意客となり、優先的にいい品を卸してもらうこと」である。
これはもちろん、資金力があるという前提での手法になるし、この前提であればいい品を優先的に出してもらうことは可能であると言える。
しかし、そもそも資金力がある状態というのは、ビジネスが成功しているということで、それはこの本の趣旨とするところではない。
資金力がない場合の「いい仕入れ方」は?
そこで、もう1つ考えられるのは、「わかってる客」として卸売業者に認知してもらうことである。
実際、個人の鮨屋などは、個人店であるがゆえに、大量に仕入れるわけではない。しかし、「あそこの大将はよくわかってるから」ということで、お互いの緊張関係の中でいい品を卸してくれるようになるのである。
余談だが、この種の緊張関係は店と客との間でも成立している。鮨屋というと、「ミシュランに載っていたから」「食べログで4.0以上だから」「3万円するから」という理由で「美味しい」という感想を持つ人を多く見かけるが、実際は、超有名店でなくても、大将と個人的な信頼関係を構築することで、優先的に美味しいネタを出してくれることはしばしばある。
その際に重要なのは、味について、あるいは旬の魚について適切な感想を述べることで、「この人にこれを出せば美味しさがわかってもらえるはずだ」という心象を大将に抱かせることである。仕入れのテクニックは、あらゆる局面で役に立つのである。
究極の仕入れは、かつてのホルモンや大トロのように、「捨てられている、実は役に立つもの」を発見して、ただで仕入れてくる、というものである。ただし、この手法は、価値がつくことが露見してしまうと次第に値段がついてしまうことが弱点なのである。