アダム・スミスが経済学を語る上で外せない訳 「神の見えざる手」はしばしば誤解されている
近代経済学の出発点は、実は倫理学と一体化
『道徳感情論(道徳情操論)』(The Theory of Moral Sentiments)(初版1759年、第6版1790年)と『国富論(諸国民の富)』(An Inquiry into the Nature and Causes of the Wealth of Nations)(1776年)は、「近代経済学の父」アダム・スミス(1723年-1790年)が著した、倫理学書および経済学書です。
イギリスの哲学者、倫理学者、経済学者。スコットランドに生まれ、グラスゴー大学で、自然法思想を継承するフランシス・ハッチソンの下で道徳哲学を学んだ。
1751 年にはグラスゴー大学の論理学教授に就任し、翌年、道徳哲学教授に転任。この頃に、イギリス経験論を代表するヒュームと出会い、大きな影響を受ける。1759 年に『道徳感情論』を出版し、1763 年にグラスゴー大学を辞職すると、スコットランド貴族ヘンリー・スコットの家庭教師として3 年間フランスやスイスを旅行し、この間に、ヴォルテール、ケネー、テュルゴーなどのフランス啓蒙思想家とも交流を持った。イギリス帰国後は執筆活動に専念し、1776 年に『国富論』を出版し、その後、グラスゴー大学名誉総長に就任。
『国富論』には、後の経済学に見られる着想のほとんどが含まれていることから、近現代における経済学の出発点とみなされていますが、それに加えて、社会思想史上の古典としても位置づけられています。
スミスが生きた18世紀のイギリスは、政治の民主化、近代科学の普及、産業革命の進展という「啓蒙の世紀」である一方で、格差と貧困、財政難と戦争といった深刻な社会問題を抱えていました。
当時のイギリスは名誉革命により立憲国家になっていましたが、その経済政策は、金銀などの貴金属を富と考え、国家による保護関税や産業保護などを主張する重商主義で、東インド会社などの特許会社による保護貿易を政策の柱としていました。
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