スエズ座礁で浮上、「コンテナ巨大化」の危うさ 国際物流競争で規模拡大、高まる物流リスク

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スエズ運河は、アジアとヨーロッパ、北米を結ぶ国際物流の大動脈になっている。スエズ運河庁の年次報告書によれば、2019年にスエズ運河を経由した貨物の量は12億0708万トン。2009年の7億3445万トンから64%も増加している。

コンテナ輸送など国際海運に詳しい拓殖大学の松田琢磨教授によれば、「世界の海を行き交うコンテナ貨物のうち、約3割がスエズ運河を経由している」という。

積荷は中国や東南アジアで製造された家電製品やIT機器、家具のほか、インドやバングラデシュ製のアパレル製品などが多く、ヨーロッパ産のワインやチーズなどの食料品もその多くがスエズ運河を経由する。

原油やLNGの約1割がスエズ経由

また、国際エネルギー機関によれば、世界の原油取引の約5%、石油製品の約10%、LNG(液化天然ガス)の約8%がスエズ運河を通じてやりとりされている。世界の海上輸送全体に占める割合も約1割に達している。

スエズ運河の通航が長期間止まった場合、「アジア・ヨーロッパ間や、アジア・北アメリカ東岸との物流機能に深刻な影響が生じた可能性が高い」(松田教授)。そして、「コロナ禍で港湾機能が低下している中、昨年来、コンテナが足りずに製品輸送が遅延する事態が生じている。スエズ運河の機能麻痺は、コンテナ物流の機能不全に拍車をかける事態となっていただろう。企業としてはサプライチェーン寸断に備えて、多めに在庫を持っておくなどの対策が必要だ」と松田教授は指摘する。

前出の南教授によれば、船舶の大きさなどの見直しとともに、「気象や海象を正確に把握するためのレーダー網の強化や、インターネットを通じてこれらの情報を即座に入手できるようにするためのシステムの整備など、スエズ運河の安全運航のために日本としても協力すべき点は少なくない」という。

スエズ運河が短期間で復旧したことでよしとせず、事故の教訓を洗い出し、再発防止につなげる必要がある。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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