生還者が初告白、「海王丸」を襲った台風の恐怖 167人の実習生襲った恐怖、水迫る密室で何が
「天井までの距離を測りながら、溺れ死ぬことばかり考えていました」――。
そう話すのは実習生として帆船・海王丸に乗船していた宮﨑早希さん(当時19歳)。暗闇の中で何かに激突した船、浸水し、船内に大量の海水が流れ落ちる階段、閉じ込められた部屋で顔まで迫ってきた水、死の恐怖に怯えながら嗅いだ重油の臭い……フジテレビ「報道スクープSP 激動!世紀の大事件7」取材班(1月18日夜9時から放送)で、今回、初めて取材に応じた宮﨑さんたち元実習生らが明かしてくれたのは、2004年10月20日、富山湾で起きた海王丸座礁事故の知られざる壮絶な生還劇だった。
167人を襲った浸水の恐怖
「船乗りを目指す者にとって帆船・海王丸は憧れでした」。取材に応じてくれた当時の実習生たちは皆、口々にそう語る。「海の貴婦人」とも呼ばれる美しさを誇る海王丸は、航海士を目指す若者たちが訓練を受ける練習船だ。
この海王丸で2カ月半の実習訓練を受けた学生たちが、やがて海洋国日本の海運業を担う船乗りになっていくのだ。多くの船が機械化された今でも帆船で訓練をするのは、波や風など自然の力を直接感じて、操船の勘を養うためである。その海王丸で、まさか自分たちが生死の境をさまようことになろうとは……。
2004年10月20日、海王丸に乗った宮﨑さんたちが異常を感じたのは、船が富山湾に錨泊(びょうはく=いかりを下ろして停泊すること)したにもかかわらず、流され始めた20時頃のことだった。就寝しようとして横になった宮﨑さんたちの体が、大きな揺れに突き上げられて、ベッドから跳ねるように飛び上がったのだ。
船の揺れには慣れていたが、体が宙に跳ね上がるほどの揺れを感じたのは初めてのことだった。たまらず起き上がった宮﨑さんたちだったが、急激に強まってゆく揺れに、もはや立っていることすらできず床を転げ回ってしまったという。