日本人が知らない「アジア系女性差別」酷い実態 ヘイト犯罪デモに集まった人たちに話を聞いた

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母娘で「LA」という文字の入ったピンクの帽子を被っているのも、単なるファッションではない。身を守るための安全策の1つ。「私たちは地元LAの人間だ。私たちの後ろにはコミュニティの仲間がついている」という意思表示なのだ。

母娘は「STOPアジア系ヘイト」「私たちは同じ人間」という手書きのサインをそれぞれ手に持っている。参加者の圧倒的多くがアジア系の住民というデモの環境で少し安心したのか、時折中国語でお互いに声を掛け合っていた。道端で中国語を話すのも、今のアメリカでは危険な行為なのだ。

黙っていたら事態は悪化するばかり

「きょうは人生で初めてデモに参加した。このまま黙っていたら、事態は悪化するだけだから」と言うのは、28歳の会計士のジョイ・チェンだ。

4月の確定申告シーズン目前で、会計士として忙殺されている彼女だが「今は仕事よりこのデモに出る方が大事。自分のためと言うより、サンフランシスコに住む両親の身の安全を守りたいから」と言う。同じアジア系で、建築デザイナーのボーイフレンドと共にデモに参加した。

サンフランシスコ在住の両親の安全を憂う会計士のジョイ・チェン(写真:筆者撮影)

チェンの両親は、中国からアメリカに移民してきた。チェン自身はアメリカで生まれたアメリカ市民だ。

「アジア系コミュニティには、おとなしくて波風を立てない人が多い。でも、だからと言って私たちがひどい扱いに強い憤りを感じていないわけではない。バイデン大統領は、アジア系へのサポートを語るだけでなく、ヘイト犯罪を厳罰に処す法制化を実現するべく、早急にアクションを起こしてほしい」と語る。

彼女が住むロサンゼルス郊外のアルケディアは、アジア系の人口が6割強の街だ。「アジア系が多いから、街中で1人だけ浮かないで済む。でも同時に、アジア系が多いぶんだけ、自分が犯罪のターゲットにもなりやすいと言える。今の状況では、安全なのか危険なのかわからない」と言う。外出するのはボーイフレンドと一緒の時だけで、最近は1人での外出はけっしてしないと決めている。

白人の多いバージニア州で育ち、現在、ロサンゼルスで俳優をしているタイ系アメリカ人で35歳のグレイス・リーは「私の命には価値がある」という言葉をタイ語と英語の両方で書いたサインを掲げていた。

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