大学発ベンチャーの起業前段階から、事業戦略・知的財産戦略を構築し、技術を理解しつつも研究者とは一線を画して経営を見ていくCEO候補者等を含めたチームビルディングをするなど、研究開発型ベンチャーならではの支援が実施されています。事業開始から2年が経過しましたが、いくつかの有望な大学発ベンチャーが、前倒しで生まれつつあります。
「変な人」を募集します!?
総務省でも、情報通信分野のベンチャー企業への民間のプロを活用した支援が動き出しています。2014年度から新たに開始された、「異能vation(いのうべーしょん 通称:変な人)」と、「I-Challenge!」です。異能vation事業は、国が「変な人」を募集することへの是非をめぐって、マスコミやインターネットで大きな反響を呼んでいるプロジェクトです。これは、奇想天外で野心的(アンビシャス)な技術課題に挑戦する個人に対する支援を行うというもの。特異な個性を潰すのではなく育てていくことで、アップルやピクサースタジオを創業したスティーブ・ジョブズのような人材を発掘しようというものです。
一風変わっているが突き出たアイデアを持つ人が世の中に変革を与えるのではないか、という考え方には多くの共感が集まっています。
I-Challenge! は、事業化を目指しているものの、いわゆる「死の谷」に苦しむ情報通信ベンチャー企業に対して資金(1億円が上限)、ノウハウ(ベンチャーキャピタル等の専門家による支援)、ツール(プロトタイプ製作)の支援を行うものです。
これらの事業では、先端的な取り組みの支援をするため、当然に民間のプロの人材の目利き、育成能力を活用することになります。また、「失敗」を次なる成功への糧と捉え、失敗例について分析、共有を図るなどの新たな仕組みも取り入れていることが特徴となっています。異能vation は7月中旬からの公募を予定しています。I-Challenge!は、6月末から公募を開始しており、いつでも応募可能です。
以上、ご紹介した支援策は一般の起業家・スピンオフベンチャー、大学発ベンチャー、情報通信ベンチャーと分野の違いこそあれ、創業前、創業間もない先端的なベンチャー企業の立ち上げを支援するもので、民間のプロの能力を施策実施の中心に置いています。行政が方向を示し、民間が実施する新しいタイプのベンチャー支援と言えます。予算規模は比較的小さい事業ですが、ぜひご注目いただければと思います。
「ベンチャーブーム」は続くのか?
ところで、今のベンチャーの盛り上がりは、単なるブームであり、どこかでまた冷えるのではないかという意見をよく聞きます。確かに、我が国では、研究開発型ベンチャー(日本電産、キーエンス等)が現れた第1次ベンチャーブーム(1970年代前半)、流通・サービス業のベンチャー(HIS、ソフトバンク等)が現れた第2次ベンチャーブーム(1980年代前半)、IT系のベンチャー(楽天、DeNA等)が現れた第3次ベンチャーブーム(1993~2000)と、過去3回のブームがあり、ブームが去るとベンチャーの活動が冷え込むという状況でした。
このブームと停滞のサイクルは今後も繰り返されると思いますが、ベンチャーを支援する民間セクターが発達し、エコシステムができれば、変動はしつつもトレンドでは上昇するという路線が描けると考えています。今回ご紹介した支援策は民間セクターの支援を強める「呼び水」と考えています。
また、今回のベンチャーの盛り上がりでは、冒頭の事例のような「社会を良くしたい、世の中の課題を解決したい」という使命感を持った起業家の「割合」が増えているように思います。もちろん、過去のベンチャーブームでも志の高い起業家が輩出し、企業を大きく成長させているのですが、ライブドアショック、リーマンショック、震災を経て、「ビジネスの原点とは何か」を考える機会を持った起業家の割合が増えた結果、その「想い」が前面に出できているのではないでしょうか。民間のプロの力を活用する政策の中で、起業家の「想い」が実現し、次の世代へのロールモデルができればと思います。
富士フイルムホールディングスの株価・業績、日産自動車の株価・業績 は「四季報オンライン」で
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら