「進化する渡辺直美と時代錯誤の五輪協会」の差

偏見をやめた先に楽しく豊かな世界がある

東京オリンピック・パラリンピックのクリエイティブディレクター佐々木宏はアイデア出しの段階で、タレントの渡辺直美を豚に変身させる演出プランを提案していた(写真:つのだよしお/アフロ)
渡辺直美を容姿いじりの対象としてしか見られない時点でセンスなし。

3月17日、東京オリンピック・パラリンピックのクリエイティブディレクター佐々木宏が、オリンピック開会式においてタレントの渡辺直美を豚に扮させる演出プランを提案していたことが明らかになり、批判が殺到したため翌18日に辞表を提出した。

尊厳を傷つける演出

明らかになったのはLINEで行われたアイデア出し会議の文章。「豚=渡辺直美への変身部分。どう可愛く見せるか。オリンピッグ」。つまりオリンピックと豚を意味するピッグをかけて、渡辺直美を豚に変身させる演出を行おうとするものだった。このプランはその会議中にダメ出しが入り、ボツになっている。

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら

1年以上前に行われたLINE会議の文章が、なぜ今になってリークされたのか。一部の報道では昨年11月に辞任した演出家MIKIKOと佐々木宏の確執があるともいわれているが、とにかくこのような文面が公に出てしまった以上、批判を免れることができない。

一方、この事件を特段に重要視すべきではないという声もあがっている。確かにこの案はアイデア出しの段階で即座に却下されており、その意味では関係者内で「自浄作用」がはたらいたともいえる。アイデア出しというのは、批判を恐れず思いついたことを何でも提案するものなので問題ないと主張する人もいる。

しかし、このような企画は、アイデア出しの段階であっても口に出すべきではないものだ。太っている人間を豚になぞらえるのは、太っている体型をネガティブにいじって笑いにする方法論であるが、そのような笑いは多くの人の尊厳を傷つけることが、現在の日本でも徐々に気づかれ始めている。まして渡辺直美という芸人が、現在どのようなキャラクターで受容されているかを考えれば、このような演出プランをそもそも思いつくはずがない。つまり人権感覚も時代感覚も、それらにアンテナを張ろうとした努力の形跡もない。圧倒的にセンスがないのだ。

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