中国「電池交換式EV」ビジネスモデル模索の背景 上海汽車は法人向け、蔚来汽車は「BaaS」を推進

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上汽乗用車はEVの「栄威 Ei5」に電池交換式のモデルを追加した(写真は電池固定式の通常モデル。上汽乗用車のウェブサイトより)

中国の自動車最大手、上海汽車集団の子会社で独自ブランドの乗用車を手がける上汽乗用車は、電気自動車(EV)「栄威(Roewe)Ei5」に同社初の電池交換式のモデルを追加し、3月11日に発表した。

通常のEVは動力源の電池が車体に固定されており、ドライバーは自宅に設置した充電器や公共の充電ステーションを利用して充電する。これに対し、電池交換式のEVは電池の取り外しが可能で、電池交換ステーションであらかじめ満充電された電池を載せ替えることで充電に代える。

2つの方式にはそれぞれ一長一短があるが(訳注:詳しくは「中国自動車大手「電池交換式EV」個人向け販売へ」参照)、EV業界では、電池交換式はタクシーやネット予約ハイヤーなど法人車両との相性がよいと考えられている。上汽乗用車もそこに狙いを定めており、栄威Ei5の追加モデルは上海市のタクシー大手である大衆交通と江南旅游が最初のユーザーになることを明らかにした。

電池交換式EVを中国で最初に普及させようとしたのは新興メーカーの蔚来汽車(NIO)だ。同社の販売は個人向けがほとんどだが、当初は電池交換ステーションの建設がなかなか進まず、ビジネスモデルが疑問視された。

車体と電池の分離販売で可能性広がる

しかし2020年になると、電池交換式EVの普及に政策面から追い風が吹き始めた。中国政府が推進する「新型インフラ建設」の対象項目に電池交換ステーションが加えられ、さらに同年7月に(自動車の産業政策を所管する)工業情報化省がEVの車体と電池の分離販売を認めたのだ。

「それまでは電池交換ステーションを建設しても採算が合わなかった。しかし車体と電池の分離販売が認められたことで、ビジネスモデルの可能性が広がった」

あるEVメーカーの幹部は、そう期待感を示す。消費者の視点で見ても、分離販売では車体だけを購入できるため、EV購入の初期負担が軽くなる。また、技術の進歩で電池の性能が上がっても、車両を買い換えることなく最新の電池を利用できるメリットがある。

本記事は「財新」の提供記事です

蔚来汽車は2020年8月、「BaaS(バッテリー・アズ・ア・サービス)」と呼ぶ新たな販売プランを導入した。BaaSでは、クルマのオーナーは電池非搭載の車体を購入し、電池はリースで利用する。蔚来汽車の董事長(会長に相当)を務める李斌氏によれば、BaaSを選択する顧客はすでに受注全体の55%に達しているという。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は3月13日

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