徳川家康を今の日本へ蘇らせた物語が持つ意味 個性的・多彩な登場人物を使って描かれたこと

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

当初、気になったのは登場人物の幅の広さだった。

繰り返すが、活躍するのはAIによって復活した過去の偉人たちである。総理大臣の徳川家康と官房長官の坂本龍馬を中心として、経済産業大臣の織田信長、経済産業副大臣の大久保利通、財務大臣の豊臣秀吉、厚生労働大臣の徳川綱吉など、「徳川内閣」は総勢18人に及ぶ。

そのため読者には、各人のキャラクターを把握しておく必要性が生じることになる。だが現実問題として、彼ら全員についての詳細、あるいは彼らが活躍した時代のことをきちんと把握しているのは、せいぜい歴史マニアくらいではないだろうか?

事実、私も何人かの登場人物について、「この人、なにをしたんだっけ?」と感じ、自身の知識のはかなさを痛感したりもした。

だとすれば、それは読み進めるうえで弊害にもなりかねないわけだが、それは著者の予測の範疇だったようである。

家康は、丁寧に秀吉に頭を下げると、視線を秀吉に劣らぬほどの小男に向けた。
その男は、厚生労働大臣に抜擢された江戸幕府の第5代将軍徳川綱吉である。

徳川綱吉(江戸時代中期)  数々の政治改革を断行し元禄文化を代表する空前の好景気をもたらした、徳川15代将軍の中でもひときわ目立つ存在。在任期間の後半は度重なる天災と、後世にまで悪評を轟かした「生類憐みの令」により、彼の評価は地に堕ちたが、綱吉の時代に、日本は戦国の荒々しさから、世界でも有数の成熟した安定国家になったことは紛れもない事実である。
(37ページより)

たとえばこのように、新たな登場人物が現れるたび簡潔な解説が挟み込まれるのである。レイアウトにも工夫が施されているため、ストーリーを追いながら必要最低限の情報を得ることができるのだ。

日本史に対する知的好奇心をも刺激

“ちょっとした仕掛け”だとはいえ、これは本書の構成上、決して無視できない部分ではないかと感じる。登場人物の個性をさらに際立たせてくれるだけでなく、日本史に対する知的好奇心をも刺激するからだ。

わかりにくかったこと、覚えられなかったこと、忘れかけていたことを再認識させてくれるため、「これを機会に、また日本史を学びなおしてみようかな」という気持ちにさせてくれるのである。

事実、私も数年前に子どものために購入してそのままになっていた『学習まんが 少年少女 日本の歴史』シリーズを改めて読みなおしてみようかという気分になった。

どうでもいいことだと思われるかもしれないが、“学びなおしのモチベーション”が高められるというのは、実際のところありがたいことだ。

次ページ個性を際立たせる
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事