USJ「任天堂ワールド」はドン底・大阪を救えるか 足かけ5年の新エリアが3月18日にオープン

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見どころはアトラクションにとどまらない。街灯の一部に小さなスーパースターが飾られていたり、ベンチはキノピオのキノコ柄。パイプの一部にクッパをイメージしたトゲトゲがあったり、マリオカートの施設のBGMにゲーム内の曲を使うなど、細かな部分までマリオの世界が再現されている。

ほかにもマリオやピーチ姫に出会うことのできる撮影スポットがあり、カフェやショップではキャラクターをイメージしたメニューやグッズをそろえた。SNS映えもバッチリだ。

アクティビティーを先行体験した女子大生の2人組は終始ハイテンション。「マリオは知っている程度だけど、楽しかった。小さな子どもでも楽しめると思う」と話していた。

マリオで海外にアピール

新エリアは従来と異なる試みでもある。後ろ向き走行のジェットコースターをはじめ、USJは比較的若い世代向けの刺激的なアトラクションが多い。だが、今回はマリオをプレイしてきた親世代と子どもが一緒に楽しむような、幅広い層向けの造りになっている。

ブロックを叩いてキャラクターを倒すゲーム(記者撮影)

また、マリオは海外で日本以上の人気を誇る地域もあるなど、海外に向けた明確なアピールでもある。

山本部長は「任天堂とともに開発し、いろいろなプレッシャーを受けながら、5年以上を要して互いに満足できるものになった。日本が誇るマリオで遊びの本能を開放してもらい、元気になってもらいたい。また、マリオは海外の人気が高く、アジアや北米でも人気がある。海外の方にも存分に楽しんでもらいたい」と語る。

期待を寄せるのはUSJだけではない。提携するホテルの関係者も「USJはわれわれにとってものすごい観光資源。USJと買い物を目的に短期で来日するアジアからの訪日客も多かった。新エリアも大いに期待している」という。

実は、大阪は観光が全国で最も冷え込んだ地域なのだ。2020年の宿泊数は前年比約64%減。インバウンド客は消失し、コロナ感染者数は多く、GoToトラベルの恩恵も受けられなかった。しかし、緊急事態宣言が解除されて今後は回復局面に入る。その際、屈指の観光資源であるUSJの盛り上がりが欠かせない。

USJはこれまで、強気の値上げを繰り返しつつも、順調に入園者数を伸ばしてきた。2013年に1010万人と大台を突破した後も伸び続け、2019年には1450万人となった。

巨費を投じた任天堂エリアの開業により、潜在的な集客力はさらに増したはず。現在は1日の入園者数を1万人以下に制限して営業しており、新エリアも当面は制限を設けて営業する。コロナ禍を経て本来の実力を発揮できるのはいつになるか。マリオたちも、その時を今か今かと待ち構えている。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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