風力発電の設置拡大政策に立ちふさがる高い壁 地域紛争が増加、自然保護など課題が多い
一見、風車には見えない「垂直軸型マグナス式風力発電機」が、沖縄の海を背景にゆっくり回る。
ベンチャー企業のチャレナジー(代表取締役CEO:清水敦史、東京都墨田区)が開発し、沖縄で試験機の稼働実験を重ね、今年から量産と販売に乗り出した風車だ。
高さ19メートル、幅7メートル、出力10キロワット。当初3つ、今は2つの円筒が、下にあるモーターの力で回転し、「マグナス力」が生まれて全体が回転し、真ん中にある発電機が回転して電力を起こす仕組みだ。円筒の回転数を風の強さにあわせて変えることで、マグナス力の発生をコントロールし、風車の回転を制御できるのが特徴という。
(注)マグナス力とは、球体や円柱が回転している場合に生まれる力。ボールを回転させると大きく曲がっていく野球のカーブボールは、この力によるものだ。
360度どの方向から風が吹いても対応可能
執行役員の水本穣戸(みずもと・しげと)さん(33歳)によると、この風車はつねに回転を制御できるため強風に強く、360度どの方向から風が吹いてきても対応できる。欧州やアメリカの大陸に比べ、地形上、風の方向が変わりやすい“日本仕様”ともいえる。低速で高トルク。1分間に最大30回転ほどなので鳥の目からも見えやすく、バードストライクは起きにくい。最大瞬間風速で毎秒40メートルまで発電を続けることができるし、毎秒70メートルまでの風に耐えられる。風切り音が発生しないため、騒音も抑えられるという。
チャレナジーを2014年に設立した代表取締役CEOの清水敦史さん(40歳)は、東京大学工学部で環境工学を学び、修士課程を修了して電機メーカーに入社した。2011年3月11日の東日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所の事故をきっかけに、エネルギー利用のあり方を変えるような事業を起こしたいと決意。サラリーマン業のかたわら、1人で研究開発を続け、効率の高い垂直マグナス式の方法を編み出して2013年に特許を取った。現在は10キロワットと小型だが、2025年までに100キロワット、2030年に1000キロワットの大型風車の開発も目指している。
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