風力発電の設置拡大政策に立ちふさがる高い壁 地域紛争が増加、自然保護など課題が多い

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タスクフォースは初会合からユーチューブで公開された(撮影:河野 博子)

風力発電所の建設をめぐる地域での紛争は、2000年ころから目立つようになった。東京工業大学環境・社会理工学院の錦澤滋雄准教授らの研究グループが新聞記事データベースを使って紛争の発生状況を調べたところ、2017年7月までに全国で紛争が発生していたのは、計76件の事業だった。紛争は1999年から全国各地で見られ、件数が多かったのは三重県12件、北海道8件、静岡県7件、福島県5件、愛知県4件、愛媛県4件。地域で反対の声が挙がった理由の中では、「野鳥」が一番多かった。

考えてみれば当たり前の話。鳥は羽を広げ、風に乗って飛ぶ。風車は、風況の良いところを選んで建てる。鳥と風車の利害は、風の利用という点で、バッティングする。

日本野鳥の会によると、風車が鳥類に与える影響には、鳥が風車にぶつかる「衝突」、風車周辺からいなくなる「生息地放棄」、渡りなどの経路を変えるなどの「移動の障壁」がある。「衝突」は、バードストライクと呼ばれる。

日本野鳥の会自然保護室主任研究員の浦達也さんによると、2020年3月までに風車に衝突したのは計580羽。体系的な調査が少なく、調査の結果が公表されないことも多いなか、2001年に沖縄県で確認されたバードストライク以降、日本野鳥の会が確認できた数字にすぎない。

猛禽類の衝突例多く、中には絶滅危惧種も

580羽の内訳をみると、絶滅危惧種も目立つ。とくに、環境省レッドリストの絶滅危惧II類で種の保存法により国内希少野生動植物種に指定されているオジロワシは56羽とダントツの多さだ。鳥の種群ごとにみると、やはり猛禽類の衝突例が多い。

「猛禽類の鳥の特徴として、顔の掘りが深いというか、目の上が出っ張っています。この顔のつくりにより、上の方を見づらい。それに、餌を探すために下を見て飛んでいるので、風車に近づき、ブレードにあたってしまう」と浦さんは説明する。基本的には、高速で回転する風車のブレードを視認できないことが、バードストライクの原因とされる。

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