コロナ禍で加速する「学校制服」の自由な選択 家計負担の軽減など費用面でのメリットも
都内の私立中高一貫校で生徒会長を務める、高校2年の細井柚季さん(17)が、いま力を入れているのは「制服のジェンダーレス化」だ。原点には、高校1年のときのアメリカ留学がある。細井さんは語る。
「留学した高校には制服も細かい校則もありませんでした。髪を染めたり、お化粧したりしている生徒もいて、なんて自由なんだろうと驚きました。だからといって学業に支障をきたしているわけでもありません。一人ひとりのアイデンティティーが尊重されているのを感じました」
留学中に仲良くなった友人に、トランスジェンダーであることをカミングアウトされた体験も、制服改革の原動力になっている。
「もしこれが日本だったら、友人は制服のスカートを履くことを余儀なくされ、カミングアウトすることも難しいのではないかと思いました。自校内にも人知れず、苦しみや葛藤を抱えている生徒はいるかもしれない。そうした生徒がわざわざ声をあげなくても心穏やかに過ごせる環境を作ることが大事だと考えました」(細井さん)
学校側との話し合いを経て、昨年12月から女子はスラックスとネクタイの着用ができるようになった。だが、男子にはまだ選択肢がない。
「今後も学校との話し合いを続けていきたいです」(同)
帰属意識と生徒管理
学校の校則を象徴する「制服」は、生徒が同じ服にそろえることで、学校への帰属意識を高め、生徒管理のツールにもなってきた。しかし、多様性が社会で重視され、学校の不合理な「ブラック校則」が問題視されるなか、そのあり方を問い直す動きが各地で起きている。
<制服を着ない自由はありますか……?>
1月末、「制服か私服か自由選択を」と訴えるオンライン署名が現れると、約1カ月で1万8千筆以上を集めた。署名を立ち上げたのは、岐阜県の公立高校教員・西村祐二さん(41、ツイッター名・斉藤ひでみ)だ。
西村さんの高校では、昨年6月の休校明けから、従来の制服だけでなく私服の着用も可能になった。コロナ禍で、ウイルスの付着した服を洗濯したい生徒に配慮してだ。西村さんは言う。