鉄道車両「定員オーバー」してもなぜOKなのか 乗客1人当たりの重さは何キロを想定している?
では、ほかに定員についての基準はないかと見てみると、JIS規格のE7103「鉄道車両-旅客車-車体設計通則」に、座席定員は「腰掛幅を乗客1人当たりの占める長さで除したときの整数値」で、とくに協定がない場合の1人当たりの長さ(幅)は430mm、立席定員は同様に0.3平方メートルとする、とある。いずれにせよ、定員は座席数と床面積によって決まるわけだ。
定員以上乗っても安全には問題のない鉄道だが、多くの人が乗れば列車は確実に重くなる。乗客の「重さ」はどのように考えているのだろうか。
電車の運転席を覗き込んだ経験のある人ならば、近年の運転台には車両の状況を運転士に示す画面が表示されていることに気付いている人も多いのではないだろうか。その中には乗車人数なども表示されている。
エレベーターに乗ると、総重量や定員などが表示されており、人数が定員に満たなくても総重量が一定の値を超えていたら、ブザーが鳴るという経験をした人も多いはずだ。それと同じような考えで、鉄道車両も荷重がどれだけかかるかによって人数を計算している。
1人当たりの重さは「55kg」
だが、世の中にはさまざまな体重の人がいる。2017年の「国民健康・栄養調査」によると、男性の平均は61.9kg、女性の平均は50.6kgである。なお筆者の体重は92.6㎏だ(身長は175cm)。参考までに、大相撲春場所での横綱・白鵬の体重は158kg、関取最軽量力士の炎鵬は98kg、最重量の逸ノ城は200㎏だ。
そんな中で、乗車人数をどうやって計算するのか、と疑問に思う人も多いだろう。
JR東日本によると、これは前出のJIS E7103「鉄道車両-旅客車-車体設計通則」で定められており、「定員質量は、乗客が乗車したときの乗客だけの質量とし、乗客1人当たりの質量は55kgとする」となっているという。運転台に表示される乗車人数などは人数を数えているのではなく、客室にかかる荷重を検知し、55kgという数字で割って算出しているわけだ。同時に、設計もこの重さを基準としているということになる。
55kgというのは、前出の男性と女性の平均体重を合わせた平均よりもちょっと軽い。筆者のように重い人が乗る場合や、あるいは多くの人が厚着をする冬の場合、人数が多めに算出される傾向があると考えられる。また、「長距離運行の特急車両などでは、乗客1人当たりの質量を60kgとする場合がある」としている。
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