鉄道車両「定員オーバー」してもなぜOKなのか 乗客1人当たりの重さは何キロを想定している?
定員160人の車両なら、1人当たり55kgであれば乗車率100%で8.8トンだ。もし乗車率200%なら17.6トンになる。55kgは目安の重さなので、さらに重い(または軽い)可能性もある。鉄道車両はこれだけ乗せる重量が変わっても安全面で問題ないように造られているわけだ。
だが、運転には影響が及ばないのだろうか。
基本的に、鉄道車両は荷重が増えたり減ったりしても、ブレーキ力などが一定になるよう調整される仕組みになっている。だが、乗車人数が多い・少ない、つまり総重量によって運転の仕方はやはり変わるという。
JR東日本によると、乗車人数は列車の加速・減速に影響を及ぼすため、運転士はこれらの影響に考慮した運転を行っているとのことだ。ラッシュ時は気を遣うことだろう。また、鉄道関係者によると、乗客の多い路線はレールがすり減るのも早いという。
新幹線は「座席定員」
一方、新幹線などの着席を前提とした列車は、座席数をもとにした「座席定員」が定員となっている。現在の東海道新幹線16両編成の座席定員は1323席。2021年7月1日に施行される省令改正で車いすスペースを広げるため、1319席となる。
JR東海によると、座席定員数は乗車可能な最大人数を示すものではないという。実際、自由席に立ち席で乗車する人は当然ながら座席定員に含まれないので、実際にはもっと多くの人を運ぶことが可能である。
また、JR東海によると、東海道新幹線の車両についてはとくに1人当たりの重量の規定はないという。ただ、乗客の荷重も含めて、「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」に基づき、安全・安定走行の確保や、軌道などの構造物に影響がないように設計しているとのことだ。
省令の第65条「車両は、軌道及び構造物に対して、当該軌道及び構造物の負担力より大きい影響を与えないものでなければならない」とあり、当然ながらこの基準は満たす必要がある。とすると、先述の55kgや60kgという想定に準拠していると考えるのが妥当だろう。
新幹線の場合、混み合う場合でも通勤列車ほど定員を大きく上回ることはあまりない。最近は新幹線による荷物輸送の実証実験もJR東日本などにより行われているものの、運んでいるものは生鮮品の魚や果物、スイーツなど重くないものだ。
定員を上回る人数が乗っているのが当たり前で、それでも何の問題もなく走っている鉄道。だが、そこにも当然ながら設計のための前提条件がある。1人当たりの座席の幅や立席の面積はもちろん、1人当たりの体重も想定して造られているのだ。
秒単位のダイヤやミリ単位の線路の幅、誤差十数センチ程度できっちり停まる駅の停車位置など、鉄道はさまざまなものが厳格に規定されているというイメージが強いだろう。乗客1人当たりの体重まで想定しているとは、興味深いのではないだろうか。
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