貧富の格差が株式バブルをもたらすメカニズム BNPパリバ・エコノミスト河野龍太郎氏に聞く

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河野龍太郎(こうの・りゅうたろう)/1987年横浜国立大学卒。住友銀行、大和投資顧問、第一生命経済研究所を経て2000年から現職。政府の審議会などの委員を歴任。著書に『金融緩和の罠』(共著、集英社新書)など。共訳にアラン・ブラインダー『金融政策の理論と実践』(東洋経済新報社)など。2021年の日経ヴェリタス「債券・為替アナリスト エコノミスト人気調査」エコノミスト部門で1位(撮影:梅谷秀司)

――日本銀行の政策点検が3月18~19日に予定されています。

基本的には今のYCC(イールドカーブコントロール)を続けるだろう。点検を行うとしているのは、2016年9月のYCC導入から4年以上経っていること、パンデミックによって目標の2%インフレが遠のいていることから、政策の確認は必要だからだ。4月の「展望レポート」(経済・物価情勢の展望)では黒田東彦総裁の任期(2023年4月)終了後の2023年の物価見通しも入ってくるので、今の政策はうまくいっていると主張したいだろう。YCCで2%インフレが達成できるとは思わないが、インフレ率が低く潜在成長率が低い中で、これに取って代わる枠組みはない。

10年金利のレンジだが、アメリカの長期金利が上がっている中で、利上げのメッセージと受け取られてはいけない。そう考えると、今のプラスマイナス20ベーシスの幅のままという可能性もあると思う。プラスマイナス25ベーシス程度として最大でプラスマイナス30ベーシスを容認する可能性もあるが、それはもう少し先になるかもしれない。

ETFは株高が続く中で、どんどん買うのはムダ玉なので、上がっているときには買わない、下がっているときに買うという柔軟性を持たせると予想している。すでに、かつての1%ルール(株価が1%以上下がったら買う)が復活しているようにみえる。上限の年間12兆円は維持したままで、年間6兆円購入の方針をはずすかどうかがポイントになる。

マイナス金利の深掘りは可能だと市場に示すために当座預金付利の3層構造の見直しをすることもありうると思っていたが、新型コロナオペが続き、地銀への特別付利も導入されるので、制度があまりに複雑になっている。今回は手を付けないだろう。日銀はいつも長短金利の引き下げは可能と言うが、長期金利の引き下げが可能と考える人はいない。

アメリカも賃金が上がらずインフレにはならない

――アメリカの1.9兆ドルの財政出動から、インフレ懸念、長期金利の行方に注目が集まっています。

イエレン財務長官はいわゆる高圧経済(需要が供給を上回る状態を続けて、労働市場の逼迫や活発な設備投資を作り出す)を戦略にしている。

アメリカの経済は今年7~9月期にはパンデミック危機前に戻るだろう。企業の設備投資もIT関連を中心に活発だ。しかし、失業率はピークアウトしたもののかなり高い水準が続いている。GDPが元の水準に戻っても雇用環境が厳しいままだと賃金は上がらない。

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