貧富の格差が株式バブルをもたらすメカニズム

BNPパリバ・エコノミスト河野龍太郎氏に聞く

――河野さんは、かねて株価の上昇が貧富の格差を拡大するだけではなく、そもそも貧富の格差があるがゆえに、株価が上昇するのだと指摘していらっしゃいます。

1990年代からITなどのイノベーションによって拡大した収入は、アイデアの出し手や資本の出し手に集中してきた。アメリカでは今やトップ1%の階層が所得全体の20%を手にし、下位50%は全体の所得の12%を占めるにすぎない。消費性向の低い高所得者に所得が集中するので、お金は金融資産に回ってしまい、消費に回らない。だから、潜在成長率、自然利子率は低下してしまう。

したがって、超金融緩和を続けても、同様に消費は大きく増えず、多くの人の賃金も増えないため物価は上がらず、資産価格ばかりが上昇してきた。

さらに、富裕層が使わずに預貯金を増やすとそのお金はどう回るかといえば、景気の悪いときに政府が発行する国債を支える、つまり国の借金が増えている。さらに景気回復局面では、富裕層の貯蓄は中低所得者が消費を行うための借り入れに回っている。だから景気がよくなっても、金利が上がると、多大な借金を抱えた中低所得者の生活がすぐに苦しくなってしまうので、利上げを続けられない。

リーマンショック後に金利が少し上がると途端に景気が悪化するという現象が続いているのは、こうした構造が背景にある。大規模財政は民需が増えるまでのつなぎだが、増えるのが借金による中低所得者の消費なら、持続的な回復とは言えないのは明らかだろう。

まさにピケティのr>gの状態にある

これはまさにトマ・ピケティ教授が『21世紀の資本』で取り上げた「r(資本収益率)>g(潜在成長率、自然利子率)」の状態で、資本主義の本質として、経済格差が広がるという話にも通じている。

歴史的に見ると、産業革命とナポレオン戦争を経てモノとカネの第1次グローバリゼーションが始まり、所得格差は拡大していった。格差拡大がようやく止まったのは、農村の余剰労働が吸収され、実質賃金の上昇が始まる、いわゆるルイスの転換点を迎えたときだ。しかし、格差の縮小には至らなかった。

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