今回、需給ギャップの3倍に相当する1.9兆ドルの財政出動を予定しており、その前に9000億ドルの財政支出も行われているわけだが、賃金が上昇しない以上、物価の上昇は長続きせず、いわゆるインフレにはならないとみている。ただ、昨年、物価が下がったことの裏が出ることもあって、一時的には上がる。
財政政策で一時的に自然利子率(投資と貯蓄を均衡させる利子率、景気に中立的、長期的にはほぼ潜在成長率に一致)が押し上げられて、タイムラグを伴ってインフレ率も上昇するが、財政政策は拡張を続けない限り、前年比でその効果が剥落するので、自然利子率もインフレ率も元の水準に戻る。さらに、先になって財政の健全化が図られれば、自然利子率もインフレ率も元の水準よりも一段下がることになる。
数字で説明すると、100のGDPを10の追加財政で110にしたとする。この場合、翌年も10の追加財政を続ければGDPは110のままで、成長率はゼロということになる。もし、翌年追加財政を行わなければGDPは100に下がってしまう。つまり将来はむしろ財政の崖による成長率の低下が問題となってくる。だから、イエレンの高圧経済戦略でもインフレ率は上昇しない。
物価連動債から逆算したインフレ期待は足元で上がっているではないか、という反論が出そうだが、FRB(連邦準備制度理事会)が買っている債券の中には物価連動債も入っている。普通の国債は発行も増えているが、物価連動債は発行が増えていないので、FRBの買いによって需給が大きく歪み、価格が上昇している。一般の人々のインフレ期待が上がっているのではない。
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