元日経のエースも参画、「深圳再開発」への疑問 宮越HD、1200億円の巨大プロジェクトの不可解

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宮越ホールディングスは今年3月、「2030年に時価総額1兆円」というトップメッセージをホームページに掲載した(編集部撮影)

2021年に入り、東証1部上場の宮越ホールディングス(HD)の株価がにわかに上昇している。背景にあるのが中国で行うとしている巨大な再開発計画だ。

同社は長年、中国などで音響・映像機器の製造を手がけてきたが、バブル崩壊後の1990年代に業容が悪化し、その後撤退。生産工場として1987年に取得したという深圳市福田区の工場跡地13.6万平方メートル(一部譲渡し現在は12.7万平方メートル。東京ドーム3個分)を活用し、中小事業者向けのオフィスや運動場として貸し出してきた。現在は収益のすべてがこの不動産の賃貸収入だ。

それが2018年に突如、深圳の工場跡地に建設費70億元(当時の為替レートで約1200億円)を投じて大規模再開発を行うとぶち上げた。具体的には、テナントとして世界中からイノベーション企業500社を誘致し、研究開発拠点、オフィス、商業、住宅を含むアジア最大級のワールド・イノベーション・センター(WIC)に生まれ変わらせるというものだ。

当初、2019年に現地政府から開発許可を得たうえで、2020年上半期に建設工事を開始、2021年に開業するというものだったが、計画発表後、現地政府からの開発許認可が下りることはなかった。しかし2021年1月8日、「WIC開発構想進捗」「平井卓也デジタル改革担当大臣との会談」と題した情報を自社サイトで発信。時を同じくして株価も上昇しはじめた。

「ちょうどよいところに来た」

2021年2月下旬、大田区の宮越HD本社に取材に訪れると、事前の予告なしに宮越邦正会長兼社長が記者を出迎えた。「あなたはちょうどよいところに来た。中国の旧正月が明けて、2月23日に深圳市福田区の政府から今年この地域一帯を重点プロジェクトとして開発するという方針が正式に打ち出された」(宮越社長)と切り出したのだ。

宮越HDが公表している開発予定地の全景(下)と開発イメージ図(上)(編集部撮影)

会社側の説明と資料内容をまとめるとこうだった。まだ現地政府の開発許認可は下りておらず、いくつかのプロセスを経る必要があるものの、順調にいけば2021年の夏前に開発許認可を得たのち設計に入り、2022年初に既存施設を取り壊して着工、早ければ2023年半ばに4つに区分けしたうちの第1期ビルを開業する予定だという。

「傘下に設計や不動産開発会社を持つシンガポールの(政府系投資会社)テマセク・ホールディングスが事業提携をしたいという話も来ていて、彼らは2年で全部建てられるという。コロナで開発が遅れた分を取り戻せるかもしれない」「(再開発計画が軌道に乗ったら)バークシャー・ハサウェイのような少数精鋭の投資会社として本格的にやろうと」。今年で80歳の宮越社長は、はきはきとした口調で1時間近く壮大な深圳の計画を披露した。

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