元日経のエースも参画、「深圳再開発」への疑問 宮越HD、1200億円の巨大プロジェクトの不可解

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この日の取材には日本経済新聞社で経済部長兼日経フィナンシャル編集長を務めていた矢沢俊樹氏が、宮越HDの広報IR担当者として同席。矢沢氏は日経新聞の中では社長候補とも目されたエースだったが、 2021年2月に宮越HDの常務執行役員経営企画本部長に就任している。 業容拡大に必要な陣容を整えるため、 宮越HDは、ほかにも大手ゼネコンや証券会社の元幹部などを次々に迎え入れている。

その後、3月8日の朝に「2030年に時価総額1兆円 少数精鋭のエクセレントな投資会社へ飛躍」と題したトップメッセージが同社のホームページ掲載されると、宮越HDの株価はストップ高となった。2020年末に666円(終値)だった株価は3月11日のザラバで一時1366円まで急騰した。

だが、深圳での巨大な再開発計画について、関係者に取材を進めていくと不可解な点がいくつか出てきた。

入居意向書に記された有名企業に尋ねた

取材当日、宮越社長が「これは、本当は見せてはいけないから、ささっと飛ばしますけども」と前置きしつつも、記者にぱらぱらとめくってみせる中国語のタイトルが書かれた赤い装丁の立派な冊子には、有名な東証1部上場の企業名とハンコがずらり。日本の大手企業の入居意向を取り付け現地政府に提出したとする「意向書」をまとめた名簿だという。

宮越HDが2021年1月8日に公表した資料では、2020年11月に行ったという大臣執務室での平井大臣と宮越社長の会談風景を掲載。平井大臣から「激励を頂きました」と記している(編集部撮影)

取材時、宮越社長は「時価総額10兆円以上もあるあの会社も、出てくるとは言いませんけど、この名簿の中にはそれに似たような会社さんが全部入っています」「(日本企業の誘致目標100社のうち)すでに7割超を取り付けた。なかなかのものでしょう?」と説明した。

記者は後日、宮越社長から見せられた冊子の中で社名が目視で確認できた複数の上場企業に、匿名を条件に事実関係の確認を申し込んだ。深圳市福田区で計画されている不動産再開発について、テナントとして入居する意向書を提出している事実もしくは予定があるかを、中国の関連子会社も含めて照会してもらったのだ。

すると、いずれの企業も進出を否定。「そのような事実は確認できませんでした。計画もないと聞いています」という答えのほか、「海外事業の統括部門や中国子会社の経営陣にも確認しましたが、そういった情報はありません。そもそもうちは深圳に進出できておらず……。他社との間違いではないですか?」という困惑した回答もあった。

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