ユニクロとジーユー「9%値下げ」もたらす価値 顧客還元の一方でコスト増となる策は吉か凶か

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直前の高値の11万0500円から翌週の株価は最大で17%も下落しました。その後少し持ち直し今週の終値でファーストリテイリング株は9万4700円で取引されています。そもそもファーストリテイリングの株価はコロナ禍の昨年春は5万円前後でした。

それがコロナ不振にあえぐアパレル業界の中でダントツの勝ち組であることが判明して、株価は昨年秋から急上昇し、この2月にはついに10万円を突破。時価総額10兆円企業に到達し、2月16日にはZARAを展開するインディテックス社を抜きアパレル時価総額世界トップになったのです。ちなみに株価10万円だと同社株の売買単位は100株なので、もはやファーストリテイリングの株式は手元に1000万円なければ投資することすらできません。

それでも今回の株価急落を見て「ファーストリテイリング株をこのタイミングで買ってみたい」と私が思った理由は、今回の値下げを大変化の前の消費者への太っ腹な還元策だと捉えたからです。

私の経験上、消費者に太っ腹で還元できる会社は成長します。イメージで言えばすしざんまいの初競りやPayPayの20%還元のようなやり方です。

コストコがあれだけ安いワケ

アメリカのウォルマートは仕入れ先に徹底した価格値下げを要求する小売店として知られていますが、創業者のサム・ウォルトンは「1セントの切り下げに成功したらその1セントは顧客に返す」と明言していました。高品質の商品が安くて人気のコストコでは年間の利益がちょうど顧客からの年会費と等しくなることが有名で、言い換えれば商品を販売することによる利益はまるまる会員顧客に還元しています。

今回のユニクロの場合、4月からの法律改正に合わせて秋冬物の価格を「表示価格+税」から税金分を顧客還元することに決めたのですが、大盤振る舞いである一方で、商品切り替え時期であることを考えれば2021年春夏物への影響はそれほど大きくはないはずです。

通常のシーズン末の売り切り値下げと同じだと考えれば、大規模な値下げでありながらそれは営業努力で吸収できるようになる。つまり顧客も喜ぶし、ユニクロも影響は軽微。そもそも本来必要だったタグを貼りかえるなど総額表示に向けて発生するはずだった大規模な作業がぜんぶなくなりますから、コスト削減策として考えれば9%値下げは効果が大きい販売キャンペーンだととることもできるわけです。

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