すでに始まった「大豆肉」を食べる衝撃的な生活 世界を席巻するインポッシブル・フーズとは

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本物のお肉のような食感を味わえるとの体験が、目的を達成しながら、できるようになったわけです。当然、ベジタリアンから支持されます。

インポッシブル・フーズの取り組みは、肉の食感だけでなく、食料問題、環境問題、貧困問題という、3つの大きな社会課題解決にも貢献しています。まさに昨今のトレンドであるESG(環境・社会・ガバナンス)まで実現してしまったのです。これまでの業界や境界の壁を意識していないからこそ、実現できたと言えます。

現在ではアメリカのみでの展開のようですが、おそらく内実ではパートナー企業などを通じ、海外でも販売すると思われます。

つまりこの先の、世界の食産業を変える可能性があると私は見ています。農家の雇用がなくなるのが問題だと指摘する人もいますが、私はそうは思いません。逆に、無理やり雇用を維持する方が、当事者だけでなく、国も不幸になると考えるからです。

それよりも今後人口爆発で食料不足が問題視されているのですから、その解決策になりえるだろうと。

「我慢」を取っ払ったエコから得る体験

インポッシブル・フーズはテスラと似ているとも感じています。電気自動車が出始めのころは、単にエコな乗り物であることが、コンセプトでした。そのため見た目はイケてない、走行距離も短い、それでいて充電時間は長いし、価格もガソリン車と比べると高い。でも環境に優しいなら、我慢して乗るかと。

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過去のベジタリアンフードと同じく、ユーザーは我慢して乗っていたわけです。そしてこのような我慢が、常識でした。ところがその常識を、テスラは取っ払いました。エコでありながら、見た目もかっこよく、スピードも速い、充電も含めたサービスも充実している。体験として満足する電気自動車を開発したのです。

業界や領域に固執していると、その中でのしきたりや固定観念に縛られてしまい、ユーザーや市場が求める本質的なニーズとはズレた商品やサービスを提供してしまっている例は、多くあります。

いま行っている事業やサービスが、ユーザーのニーズにフィットしているのかどうか。ハード、ソフトどうこうではなく、その先の体験に基点を置いた企業が、これからの未来をつくっていくのです。

山本 康正 ベンチャー投資家、京都大学経営管理大学院客員教授

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やまもと やすまさ / Yasumasa Yamamoto

東京大学で修士号取得後、NYの金融機関に就職。ハーバード大学大学院で理学修士号を取得し、グーグルに入社。フィンテックやAI(人工知能)などで日本企業のデジタル活用を推進し、テクノロジーの知見を身につける。日米のリーダー間にネットワークを構築するプログラム「US-Japan Leadership Program」諮問機関委員。京都大学経営管理大学院客員教授。日本経済新聞電子版でコラムを連載。著書に、『シリコンバレーのVCは何を見ているのか』(東洋経済新報社)、『世界最高峰の研究者たちが予測する未来』(SBクリエイティブ)、『アフターChatGPT』(PHP研究所)、『テックジャイアントと地政学』(日本経済新聞出版)など。

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